ベージュの手帖

陽子はクラスで一番 無邪気な娘なの
誰でもウィンクひとつで友だちだった
翳りひとつない笑顔
十月の雨の朝 トランクをひとつ持ち
寝静まる家のドア ひっそりと閉めた陽子
机にベージュの手帖 残る言葉は
「自由になりたい」

陽子はほんの子供とおこる父親
手塩にかけ育てたと泣いた母親
ガラス箱の人形ね
十月の雨の朝 トランクをひとつ持ち
ありふれた倖せに背を向けて消えた陽子
心の裏側なんて 誰も読めない
「自由になりたい」

十月の雨の朝 トランクをひとつ持ち
背の高い青年と手をつなぎ消えた陽子
ほんとの倖せなんて 誰も知らない
「自由になりたい」
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