時雨海峡

海のとばりに とじこめられて
月も岬も 闇の中
あなたを乗せた 捲網船(まきあみせん)の
灯りが一つ 波間に一つ
点(つ)いては消えて また点(つ)いて
恋を占う ああ 時雨海峡

翼ぬらした 風見の鳥が
くらい海みて 啼(な)いている
しぐれはほんの 一時なのに
止むまで待てぬ 女のこころ
わかっているよ わかるわと
胸にとげ刺す ああ 時雨海峡

男心と 山背(やませ)の風は
マリアさまにも 止められぬ
チャペルの鐘が あと追いかける
あなたの船は しぶきを浴びて
左へ右へ ゆれながら
西へ流れる ああ 時雨海峡
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