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ザ・クロマニヨンズ ライヴレポート

ザ・クロマニヨンズ ライヴレポート

【ザ・クロマニヨンズ ライヴレポート】 『ザ・クロマニヨンズ ツアー 月へひととび』 2023年10月3日 at 恵比寿LIQUIDROOM

2023年10月03日@

撮影:柴田恵理/取材:岡本 明

2023.10.12

全国ツアー『ザ・クロマニヨンズ ツアー MOUNTAIN BANANA 2023』を4月に終えたばかりのザ・クロマニヨンズ。最新アルバム『MOUNTAIN BANANA』を中心にしたライヴで強烈な印象を残してきた彼らだが、半年もたたないうちに新たなツアー『ザ・クロマニヨンズ ツアー 月へひととび』が開催された。9月4日にスタートした今回のツアーはコンパクトな規模で、13カ所を約40日間で回るスケジュール。しかも、会場はライヴハウスばかりということもあって、至近距離で彼らのライヴパフォーマンスを体験できる絶好の機会となった。今回は10月3日に行なわれ他東京LIQUIDROOMでのライヴをレポートしよう。

ぎっしりと観客で埋め尽くされた会場。開演時刻になるとロケット発射カウントダウンのアナウンスが流れ、「テルスター」(人工衛星を題材にした62年のヒット曲)をオープニングに使用するという、宇宙にちなんだ演出で登場してくるメンバー。おそらく、中秋の名月のタイミングを挟んだツアー期間なので“月へひととび”というツアータイトルになったのだと思うが、ライヴを体験すること自体、人の感性をはるか遠くに飛ばすものだというメッセージにも受け取れる。

“オーライ、ロックンロール!”という甲本ヒロト(Vo)のシャウトをきっかけに、本公演は「キラービー」でスタート。最初からアッパーなナンバーに乗せて、とてつもない熱量の演奏と歌声をぶつけてくる。会場にどっしりとした低音が響き、鮮やかなサウンドが生々しく展開されていく。さらに、キャッチーなサビがいつまでも耳に残る「ランラン」、爽快なコーラスが心地よい「暴走ジェリーロック」、情景が浮かぶ歌詞とスピード感あふれる演奏が見事なマッチングを聴かせる「オートバイと皮ジャンパーとカレー」など、続けざまにシンプルかつメリハリの効いたナンバーを披露する。

“ありがとう、よく来てくれました。最後まで楽しんでいってください。アホみたいに騒いで帰ってくれ、今日は一番楽しい夜だから。宇宙で一番スゲェ夜だから”

そう甲本が感謝を述べると、ここまで続いていた早急なテンポ感をすこし緩め、やさしいタッチの「キスまでいける」、引き締まったリズムの「犬の夢」と、ミディアム調のナンバーが並ぶ。勢い重視の演奏から、じわじわとアンサンブルの面白さを聴かせるセクションへと移っていく。甲本のハーモニカソロと真島昌利(Gu)のギターソロが鋭く刻まれる「ムーンベイビー」もブルージーな味わいをしっかりと刻んでいた。

“ありがとう、もうすごいです。(“愛してるよ!”という歓声に対して)僕は君たちのことは全然好きじゃないけど、愛してるよ。どっちかと言うと嫌いな感じだけど、でも愛してるよ(笑)。愛してるっていうのは、好きとか嫌い、関係ないからな。今日はそういうことにしておいてくれ。みんな仲良くやりましょう。それではどんどんやろう!”

甲本があえて皮肉を込めて観客への愛を語り、次の曲へと進んでいく。「雷雨決行」「エイトビート」をエネルギッシュな演奏で繋ぎ、「生きる」では原曲以上にハイテンションな甲本のヴォーカル、普遍的なロックンロールにさらなる生命力を吹き込むバンドサウンドが、大きなスケール感をもたらしていた。

“今日はみなさん、元気がよろしいです。やっと声が出せるようになったし、良かった。歌に紛れて、大好きな人の名前を叫んでください。今、一番会いたい、遠くに離れている恋人の名前でも何でもいい。今日は自由に、自分の楽しいことに使ってください。もし万が一、俺たちのことが大好きだったら、俺たちのこともでっかい声で呼んでください”

そんな甲本の言葉に応えるフロアーから湧き起こるメンバーの名前の連呼とともに、会場は幸福な気持ちに包まれる場面も。真島がストラトキャスターに持ち替え、繊細な音色を奏でながら始まったのは「グリセリン・クィーン」。メンバーの美しいコーラスが曲の個性を際立たせる。そして、ここからライヴ後半に向けて加速していく。骨太なフレーズで入ってくる力強いリズム隊のイントロに続き、ギターとハーモニカのユニゾンがパワフルにキマる「底なしブルー」で、再び熱量を上げて突き進む。甲本のハーモニカに真島がギターで絡むように始まる「暴動チャイル(BO CHILE)」が、ボ・デイドリーのジャングルビート全開でワイルドな表情を見せる。さらに、突き上げる拳で迎えられる、開放感あふれる「エルビス(仮)」、会場全体のハンドクラップで一体感が生まれる「どん底」と、果てしなく昇りつめていく。“このまま最後まで行けそうですか? もうちょっと楽しいことが残ってるから、バッチリぶち上がってください。まさに今日は“宇宙で一番スゲェ夜”!”と甲本が叫んで、「GIGS(宇宙で一番スゲエ夜)」をこれ以上ないほどのフルパワーで聴かせ、最後の「紙飛行機」「タリホー」を無尽蔵のエネルギーで絞り出すと、4人は大きな満足感とともにステージを去っていった。

観客の拍手に応え、“名残惜しい、もうちょっとやらせてくれ!”(甲本)と再登場すると、ゆったりとレゲエ調になるパートと疾走感のあるサビとのコントラストが面白い「イノチノマーチ」をアンコールで取り上げる。続けて、軽快な「ギリギリガガンガン」、観客の合唱が起こる「ナンバーワン野郎」と、ライヴの締め括りに相応しいキレキレのナンバーを繰り出し、4人は笑顔のまま去っていった。

今回はアルバムリリースのタイミングで行なっている従来のツアーとは異なるせいもあり、自由に楽曲を選んでセットリストを組んだライヴとなっていた。それでいて、一貫してシンプルなロックンロールでありながら、尽きることのない魅力を放つ楽曲の多いことに驚かされるライヴでもあった。加えて、長いツアーでも短いツアーでも一本一本を大事にとらえながら心血を注いでライヴを行なっている、その充実感。緊張感に浸りながらも全てのライヴを全身で楽しむこと。それを、これだけのキャリアを持ちながらも決して忘れないメンバーの凄みを感じさせたライヴでもあった。

今後の彼らに触れておくと、10月18日にはライヴアルバム『ザ・クロマニヨンズ ツアー MOUNTAIN BANANA 2023』をリリースする。来場したファンにはライヴの臨場感をもう一度味わえる内容であり、行けなかったファンには最上級のライヴを音源で新鮮に楽しめる内容になっている。ロックンロールを追及する旅を続ける彼らの生々しい歌と音を、ぜひとも爆音で浴びてほしい。

撮影:柴田恵理/取材:岡本 明

ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズ:2006年7月23日13時41分、『FM802 MEET THE WORLD BEAT 2006』に出現。その後、数々の夏フェスにも出現し、デビュー前から話題を呼んだ。そして、同年9月に待望のシングル「タリホー」でデビュー。20年5月 新型コロナウィルス感染拡大の影響により『ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020』の中止を発表(12公演)。それに伴い、同ライヴ音源を収録したライヴアルバム『ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020』を9月に、同年12月には14枚目のアルバム『MUD SHAKES』をリリース。さらに、12月11日には初の配信ライヴ『ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 全曲配信ライヴ』を実施。21年は2月に東京ガーデンシアターにて『ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021』ライヴ&生配信し、8月より6カ月連続シングル発売する企画『SIX KICKS ROCK&ROLL』始動。年を跨いで22年1月にSIX KICKS ROCK&ROLL第6弾シングル「ごくつぶし」と15枚目のアルバム『SIX KICKS ROCK&ROLL』を同時リリース。そして、13年1月に16枚目のアルバム『MOUNTAIN BANANA』をドロップ。ロックンロールをこよなく愛する4人が最強のロックンロールを響かせる!

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