LIVE REPORT

城 南海 ライブレポート

城 南海

『ウタアシビ2016春』

2016年03月19日@日本橋三井ホール

撮影:在津完哉/取材:桂泉晴名

2016.04.04

心の琴線に触れる温かく澄んだ歌声で多くの人を魅了し、出演中のテレビ番組テレビ東京『THEカラオケ★バトル』では9冠(3月19日現在)という偉業を達成している城 南海(きずきみなみ)。テレビやCDでも彼女の歌の素晴らしさは十分伝わるが、やはりライヴで直接体感することに勝るものはない。

この日、ステージに現れた城南海は、深い藍色で、ところどころに花の模様が入ったドレスをまとっていた。彼女の美しさを際立たせていて、目を奪われる。ライヴは一青窈作詞の「兆し」で穏やかに始まった。この曲は東日本大震災が起こった2011年に発表されたが、悲しみに沈むのではなくそっと祈りを捧げ、未来の光を見ようとしている詞が心に残る。城の語り掛けるようなヴォーカルが会場を満たしていく。今回はピアノ(ただすけ)、ギター(遠山哲郎)、パーカッション(notch)、チェロ(古川淑恵)というバンド編成で、音の響き合いを十分堪能できるようになっていた。

2曲目は水面に映る月に、人とのつながりを重ね合わせた情熱的な「月と月」。城のヴォーカルにピアノのただすけのコーラスが合わさって、力強さが増していく。エモーショナルに歌い上げる彼女の姿を観ていると、ここ1、2年ですっかり大人の女性としての風格が漂ってきていたが、その印象は一層強くなった。テレビ番組『ザ・ノンフィクション』のテーマソングであり、これまでジ・エキセントリック・オペラ、中孝介、たむらぱんといったアーティストが歌い継いできた「サンサーラ」では、城の声を追いかけるようなチェロの音にドキッとする。以前、城のライヴを観た時も感じたが、チェロの深みのある低音は、やはりどこか愁いをたたえた城のヴォーカルにぴったりと合っていると思った。

そして、2009年のテレビドラマ『エゴイスト~egoist~』の主題歌「誰カノタメニ」。この曲を歌った後、城は“今日は(川島)なお美さんのドレスを着ています”と明かす。『エゴイスト~egoist~』は川島なお美さんの出演作で、城との出会いのきっかけとなった作品である。川島さんを心から慕っていた彼女の思いが伝わってきて、胸がいっぱいになる。

ライヴの中盤は、カバーコーナー。ファンから事前にリクエストを募り、歌いたい曲をメドレーにしてイルカの「なごり雪」やRUI(柴咲コウ)の「月のしずく」を披露した。『THEカラオケ★バトル』の時もそうだが、城は原曲の持っている世界観を大切にしながらも、彼女ならではの表現に昇華していく。

さらに、城のライヴでは恒例となっている、オーディエンスと一緒に歌って遊ぶウタアシビコーナーでは、三沢あけみの「島のブルース」をセレクト。この曲は城が以前、司会アシスタントを務めていたテレビ番組『徳光和夫の名曲にっぽん』で三沢あけみと共演した時に歌い、三沢本人から“この歌をぜひ歌い継いでほしい”と言われたという。手拍子をしながら、オーディエンスは城の誘導に合わせて歌う。そのまま軽快な「ハルカゼ」とラテン調のアップテンポな「アカツキ」が続く。しっとりした曲で静かに引き込むのも城 南海の魅力だが、リズムに乗ってオーディエンスの感情を高めていくのも、彼女の歌の醍醐味だろう。

本編はデビュー曲の「アイツムギ」で締め括る。城がデビューしたのは19歳の時。その後、いろいろな人と出会い、その思いを受け継いできた。シマ唄もそうであるが、今まで城のアーティスト活動には“継承する”というテーマ性を感じていた。しかし今回は、継承したものを、彼女の心と体を通して、新たな表現として生み出していく、ということを強く印象付けるライヴだったと感じた。
この歌手の歌詞一覧 この歌手の動画一覧

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 7

    なごり雪 (カバー)

  2. 8

    月のしずく (カバー)

  3. 9

    遠く遠く (カバー)

  4. 10

    メロディー (カバー)

  5. 11

    キセキノハナ (カバー)

  6. 12

    島のブルース (カバー)

  7. <ENCORE>

  8. 17

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