このフレーズは、上京するときオトンに言われた言葉なんです。

―― 4曲目の「#YOLO」はまた歌詞のテイストが変わりますが、まずタイトルは何と読むのですか?

これは「#YOLO(ヨロ)」で、インスタの“You Only Live Once(人生は1回だけ)”という有名なネットスラングのひとつです。この歌だけタイトルをずっと迷っていたんですよ。僕は最初「エイリアン」って付けていたんですけど、変えようか!ってメンバーとLINE上で盛り上がりまして。たしかうちのベースがこのタイトルを付けたんですよね。彼はSNS大好きなので(笑)。内容的にも、SNSや今のエンタメを風刺しつつ、僕が思っていることを書きなぐった歌詞になっていて、面白い曲ですね。

―― 現代ならではのワードが次々と登場しますね。

そうそう。1行目の<コンプラに囚われてさ キバを抜かれた嘘のTV SHOW>とか、僕はテレビっ子なので、まさに現代のエンタメに対する気持ちを書きました。とはいえ、そうやって風刺しながらも、結局はコンプラというものに縛られている自分たちの姿も同時に書いているんです。思い切り「ロックだ!」って生きているバンドマンって実はそんなにいないですからね。イエモンの吉井さんや、怒髪天の増子さんぐらいだと思います(笑)。わりとみんな、世の中に迎合はしてないけれど、溶け込んでいているんだなぁ…って感じたときにこの歌詞は出来たんですよね。自分に対しても「サブ!」って思っているというか。

でもリアルなことを言うと、まさにさっきの<プライド捨てても 夢は捨てるな>の話じゃないですけど、上に行くために必要なことってあるじゃないですか。そりゃ書きたいこと書いてロックでありたいけど、出たいテレビ番組だったり、流してほしいラジオだったり、大きなタイアップだったり、企業の方の意向だったり、いろいろあるから。そこに対して、何らかの気を遣うことも時には大切で。まぁそういう部分もあるからこそ、僕らも「#YOLO」のような楽曲でなんとか帳尻を合わせているんです(笑)。

―― そういえば以前、GLIM SPANKYさんにインタビューしたときも<マリュワナ(=マリファナのこと)>や<ジプシー>というワードが、大人の事情的にNGだったと聞きました。

あー!そういうのめっちゃありますよ!ありがたいことにいろんな企業の方からお仕事をいただけていて、その都度「ブルエンさんの好きに書いてください」と言っていただくんですけど、「好きに書いていい」ということはイコール“いろんな方々の気持ちを考えて作る”ということが前提なんだなと、改めてこれまでの経験値で思うところですね。

―― 5曲目「幻聴」は田邊さんが「すごくムカつくことがあって、大阪の帰りに、新幹線の中で歌詞を」書いたそうですね。※Twitterのセルフレビューより

そう、なんでブチ切れたんだっけなぁ…。いろいろ制作の滞りとか、情報伝達のミスとかが蓄積して、大阪の居酒屋さんでバチコーンと怒っちゃったんだ。僕あんまり怒らないんですけど、制作のときに限っては本当にピリピリするんですよ。でもよく考えてみるとそこでグッとこらえて、ちゃんと整理整頓すればよかったのにな、もっと俯瞰で見られればよかったのにな、とか思うところがあって。だからこそその気持ちをちゃんと歌詞に落とし込もうと思ったんです。結果、チームのなかでも「ブルエンでこんなにダークな応援歌ってなかったよね」「新しい感じで良いね」ってなって。みんなにとっても良い曲になりそうだなって。

―― 歌詞は、田邊さんがイチオシとしてツイートしていた部分も好きなのですが、先ほどお話にも出た<ずっと聞こえていた あなたの声に似ていた 本当は知っている「手の鳴る方へは何もない」 >というフレーズが刺さりました。この<あなた>とは誰なのかな…と。

ここはスーパー余白部分ですね。受け取ったひとを<あなた>というのか。もしくは受け取ったひとにとっての<あなた>を意味するのか。これこそ歌詞の醍醐味だなって。だけど僕個人にとっては、うーん…。この歌は、何もできない情けない自分に向けて書いたので「お前もっとしっかりしろよ!」と言ってくれるような存在なのかな。多分<あなた>に叱ってほしかったんです。だからたとえば、オカン、オトン、姉ちゃん、俯瞰で見た自分自身、とかが当てはまる気がするなぁ。みなさんも各々、自分が怒られたい相手を想像しながら聴いていただくというのも良いと思います。

―― ラスト、6曲目の「アンコール」は歌詞に最もバンドの想いが反映されているのではないでしょうか。とくに、バンドの解散が立て続いている今日この頃だからこそ<“これからもあなたと 歌いたい" >というフレーズは、ファンの方々にとって希望になると思います。

まさにこれはファンの皆さん、チームの皆さん、マネージャーさん、家族、すべての大事なひとたちに向けて作った、バンドのアンセムです。いや本当に…解散も含め、別ればっかりはどうにもならないんですよね。僕のね、仲良かったバンドのボーカルの子は亡くなってしまったりとか。いつどんな形で別れがくるかわからないじゃないですか。そう考えると、当たり前のように終わっていくのは嫌だな、まだ終われないな、という気持ちが昨年からずっと膨らんでいて。そんな想いからこの曲は出来ました。

最初は「エンドロール」というタイトルだったんですよ。で、エンドロールという言葉に沿った歌詞を書いていたんですけど、でもそれは違うなって。たとえ歌の中でもエンドロールにするのは嫌だなって。じゃあ「エンドロール」に勝る言葉ってなんだろうと考えてみたら「アンコール」というタイトルにたどり着きまして。そこから最後のフレーズがブワーッと書けたんです。ブルエン楽曲のなかで一番メッセージの強い曲になったし、すべてのフレーズに“今”がギュッと詰まっている気がしますね。これがあっという間に出来たということがすごく嬉しいです。

―― アルバムの最後の最後が<アンコールは続いてく>というフレーズで締め括られるのも素敵ですね。まだまだ広がってゆくブルエンの可能性を感じます。

photo_03です。

そうそう!たとえ何回「もう終わったかも」って思っても、周りがアンコールを鳴らしてくれたなら、続けていけるんです。それはバンドだけじゃなく、誰でも絶対そうだと思うので。僕も「またお前と一緒にやりたい」と言ってもらえると、生きていてよかったと思えるし、やっぱりそう言ってもらえるように生きていかないとなって。あとこの歌はライブのクライマックスみたいな曲だから、これからどんどん僕らと共に育っていくだろうということも感じていますね。

―― ありがとうございました!では最後に、アルバムのなかで最も「これが書けてよかった!」と思うフレーズを教えてください。

んーーー、やっぱり一番は「アンコール」の<巨大な砂漠の中で 一つの花を探すような毎日だけど 大切なモノを失いながら 大事なことに気づいていく “これからもあなたと 歌いたい" >ですね。この<巨大な砂漠の中で 一つの花を探すような毎日>というワードは、上京するときオトンに言われた言葉なんですよ。二十歳の頃ですね。「お前は本気で覚悟して、そんな東京に行けるのか」みたいなことを言われて。当時はよく意味がわからなかったんですけど、やっとわかるようになった今にいます。

いつかこの言葉をちゃんと曲に出来たらなと思っていたので、15年バンドをやってきて、このアルバムでようやく叶って、それが自分のなかでは一番嬉しいことですね。この前、出来上がったCDをオトンに渡したとき、「この曲の歌詞はあなたに言われた言葉です」って言いました。まぁなかなかの照れ屋さんなので「そうか…あとでゆっくり聴くわ」と(笑)。まだ総評をいただいてないので、今度地元に帰ったら飲みながらゆっくり話をしたいと思っています。


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