私はおんな美空ひばり | 美空ひばり | 滝口暉子 | かとう哲也 | 成田深史 | 夢にはぐれた 女の末は 嘘と涙の 吹きだまり 好きだと 言われる 恋など二度と したくない 強がりだけに 泣かされる 私は おんな 噂おそれて 別れていった 男心は 薄情ね 惚れてならない 人なら逢わず いたかった ネオンの陰に おぼれても 私は おんな 意地は張っても かくせぬつらさ いつか心の しみになる さよなら さよなら まぶたの裏に 生きる人 せめても夜に すがりたい 私は おんな |
鏡美空ひばり | 美空ひばり | 藤田まさと | 猪俣公章 | 佐伯亮 | 男こごろは うそばかり うそに女は 泣くばかり すがる 甘える だまし合う 女が泣く時ゃ 鏡もくもる そんな鏡を くもる鏡を 誰がふく 生きるささえが 恋ならば 恋はいのちを 閉じるまで 咲いてしぼんで 散って行く 花より私は 幸せなのよ それを鏡に 今日も鏡に 言いきかす うつす鏡の 奥深く 数えきれない 夢がある 泣いた笑った 生き抜いた あの夢 この夢 私の人生 それが鏡に うつす鏡に よみがえる |
みだれ髪美空ひばり | 美空ひばり | 星野哲郎 | 船村徹 | | 髪のみだれに 手をやれば 赤い蹴出(けだ)しが 風に舞う 憎や 恋しや 塩屋の岬 投げて届かぬ 想いの糸が 胸にからんで 涙をしぼる すてたお方の しあわせを 祈る女の 性(さが)かなし 辛(つ)らや 重たや わが恋ながら 沖の瀬をゆく 底曳(そこび)き網(あみ)の 舟にのせたい この片情(かたなさ)け 春は二重(ふたえ)に 巻いた帯 三重(みえ)に巻いても 余(あま)る秋 暗(くら)や 涯てなや 塩屋の岬 見えぬ心を 照らしておくれ ひとりぼっちに しないでおくれ |
函館山から美空ひばり | 美空ひばり | 小椋佳 | 小椋佳 | | 函館山から 立待岬 吹き上げる雪の中 飛び交うかもめよ 若い男は 荒海を走る 優しさ拒む 背中にいつも 悲しむ女がいた 今はただ胸にしみる ひとりの寒さよ おまえはもう 若くはないと とどろく波よ 誰を待つのか 立待岬 頬を切る風の中 たたずむ乙女よ 紺のかすりに 想い出す笑顔 身勝手許す 背中にそっと 涙を隠していた 淋しさをわかちあえる 懐かしい女よ 凍て曇る冬の空にも 想いを投げよう 函館山から 立待岬 吹き上げる雪の中 飛び交うかもめよ |
東京キッド美空ひばり | 美空ひばり | 藤浦洸 | 万城目正 | 仁木他喜雄 | 歌も楽しや 東京キッド いきで おしゃれで ほがらかで 右のポッケにゃ 夢がある 左のポッケにゃ チュウインガム 空を見たけりゃ ビルの屋根 もぐりたくなりゃ マンホール 歌も楽しや 東京キッド 泣くも 笑うも のんびりと 金はひとつも なくっても フランス香水 チョコレート 空を見たけりゃ ビルの屋根 もぐりたくなりゃ マンホール 歌も楽しや 東京キッド 腕も自慢で のど自慢 いつもスイング ジャズの歌 おどるおどりは ジタバーク 空を見たけりゃ ビルの屋根 もぐりたくなりゃ マンホール |
悲しき口笛美空ひばり | 美空ひばり | 藤浦洸 | 万城目正 | 田代与志 | 丘のホテルの 赤い灯も 胸のあかりも 消えるころ みなと小雨が 降るように ふしも悲しい 口笛が 恋の街角 露地の細道 ながれ行く いつかまた逢う 指切りで 笑いながらに 別れたが 白い小指の いとしさが 忘れられない さびしさを 歌に歌って 祈るこころの いじらしさ 夜のグラスの 酒よりも もゆる紅色 色さえた 恋の花ゆえ 口づけて 君に捧げた 薔薇の花 ドラのひびきに ゆれて悲しや 夢とちる |
私は街の子美空ひばり | 美空ひばり | 藤浦洸 | 上原げんと | 上原げんと | わたしは街の子 巷の子 窓に灯が ともる頃 いつもの道を 歩きます 赤い小粒の 芥子の花 あの街角で ひらきます わたしは街の子 巷の子 なんで灯が 恋しやら いつもの歌を 歌います 柳落葉が ひらひらと 赤いリボンに つもります わたしは街の子 巷の子 ついた灯が また消えりゃ いつもの人に 出逢います 今は恋しい 母様に うしろ姿も そっくりな |
青空天使美空ひばり | 美空ひばり | 門田ゆたか | 万城目正 | 田代与志 | 昨日雲とぶ あの山越えて 今日は花咲く 街の角 母をたずねて 涙で歌う 旅の乙女の 歌かなし 花のかおりか あの星かげか 見えぬ姿の 母の顔 胸に偲べば 灯かげも暗い 夜の都の はぐれ鳥 影と二人で 歌うて泣いて 行くは何処か おぼろ月 肱を枕に 眠れば浮ぶ 夢にほほえむ 母こいし |
旅路のはて美空ひばり | 美空ひばり | 深尾須磨子 | 高木東六 | 高木東六 | さすらいの たそがれ おもいでの あの空 暮れてゆく はるかな 山なみのいろ すすり泣く そよ風よ ぬれてまたたく 一つ星 ただひとり ただひとりここに 旅路のはてよ よろこびは はかなく 散る花の いのちよ 消えてゆく 夕べの なないろの 雲 忘られぬ おもかげよ もえてささやく あのひとみ ただひとり ただひとりここに 旅路のはてよ |
もしもこの世がお芝居ならば美空ひばり | 美空ひばり | 古賀政男 | 古賀政男 | 佐伯亮 | もしもこの世が御芝居ならば いつも私は振られ役 泣いて笑って筋書通り こんな男を誰が知ろ 若い身じゃもの血潮はたぎる 俺も人の子人なみに 熱い情にあこがれて 燃えて切ない恋もした それが義理ならあきらめ捨てて 遠く別れて行けばとて 清いあの娘の純情に 泣いて夜霧の旅がらす |
ポトマックの桜美空ひばり | 美空ひばり | 藤浦洸 | 米山正夫 | | ポトマックの桜 愛の花よ 遠い夢をみて 微笑む花 東に吹く風に かおりをのせ ひろい海をこえて おくるあつい心 さくら さくら やよいの空は みわたす かぎり なつかしのうたよ ふるさとよ ポトマックの桜 愛の陽ざし 春を待つすがた 水にうつし 訪ずれる人に 心をよせ 遠い国の母の やさし声の想い さくら さくら かすみか くもか においぞ いずる なつかしのうたよ ふるさとよ ポトマックの桜 愛のむすび つよい土に生き 枝をひろげ やがてひらく日の 歌を歌う いつもいつも 思いだして歌う歌は さくら さくら ともども そろい いざ みにゆかん なつかしのうたよ ふるさとよ |
夾竹桃の咲く頃美空ひばり | 美空ひばり | 中村メイコ | 神津善行 | | 夾竹桃の咲く頃に あの人は言った 「どうしても行くのか」と 私はうなずいた 「どうしても行くわ」 あれから三年 あれから三年 ああ 夾竹桃の 花は 花ははるか 夾竹桃の散る頃に あの人の手紙 「どうしても逢いたい」と 私は泣きながら 「どうしても逢えないわ」 あれから三年 あれから三年 ああ 夾竹桃の 花は 花ははるか 夾竹桃の花の下 あの人の噂 嫁さんをもらったと 私は空を見て つぶやいた「おめでとう」 あれから三年 あれから三年 ああ 夾竹桃の 花は 花ははるか |
しのぶ美空ひばり | 美空ひばり | 吉岡治 | 市川昭介 | | 吐息まじりに 微笑(わら)った 頬に淋しい ほくろがひとつ どこかおまえに 似ている 似ているようで 酔いにまかせて 抱きよせた しのぶ…… しのぶ…… 小さな爪が あゝ 背にいたい 不幸つづきの 運命(さだめ)が 痩せたおまえを なお細くする なんでいまさら 旅路の 旅路のはてで すてたおんなの 名をなぞる しのぶ…… しのぶ…… のむほどにがい あゝ こおり酒 おとぎばなしか 酒場は 酒のちからで 夢さえかなう ふたり咲かせる 小さな 小さな春を 逢いに帰ろか あの路地へ しのぶ…… しのぶ…… さすらう町に あゝ 冬の雨 |
柔美空ひばり | 美空ひばり | 関沢新一 | 古賀政男 | 佐伯亮 | 勝つと思うな 思えば負けよ 負けてもともと この胸の 奥に生きてる 柔の夢が 一生一度を 一生一度を 待っている 人は人なり のぞみもあるが 捨てゝ立つ瀬を 越えもする せめて今宵は 人間らしく 恋の涙を 恋の涙を 噛みしめる 口で言うより 手の方が早い 馬鹿を相手の 時じゃない 行くも住(とま)るも 坐(すわ)るも臥(ふ)すも 柔一すじ 柔一すじ 夜が明ける |
人生一路美空ひばり | 美空ひばり | 石本美由起 | かとう哲也 | | 一度決めたら 二度とは変えぬ これが自分の 生きる道 泣くな迷うな 苦しみ抜いて 人は望みを はたすのさ 雪の深さに 埋もれて耐えて 麦は芽を出す 春を待つ 生きる試練に 身をさらすとも 意地をつらぬく 人になれ 胸に根性の 炎を抱いて 決めたこの道 まっしぐら 明日にかけよう 人生一路 花は苦労の 風に咲け |
川の流れのように美空ひばり | 美空ひばり | 秋元康 | 見岳章 | | 知らず知らず 歩いて来た 細く長い この道 振り返れば 遥か遠く 故郷が見える でこぼこ道や 曲がりくねった道 地図さえない それもまた人生 ああ 川の流れのように ゆるやかに いくつも 時代は過ぎて ああ 川の流れのように とめどなく 空が黄昏に 染まるだけ 生きることは 旅すること 終わりのない この道 愛する人 そばに連れて 夢探しながら 雨に降られて ぬかるんだ道でも いつかは また 晴れる日が来るから ああ 川の流れのように おだやかに この身を まかせていたい ああ 川の流れのように 移りゆく 季節 雪どけを待ちながら ああ 川の流れのように おだやかに この身を まかせていたい ああ 川の流れのように いつまでも 青いせせらぎを 聞きながら |