関取花

親知らずがズキンズキンとうずくたび、あなたのせいにしたくなり…。

 2018年6月13日に“関取花”が3rdフルアルバム『ただの思い出にならないように』をリリース。今日のうたコラムではその収録曲から、すでに先行配信&歌詞先行公開がスタートしている新曲「親知らず」をご紹介いたします!尚、同曲はNHK『みんなのうた』で放送中のナンバー。歌詞に描かれているのは、思春期ならではの複雑な感情です。

 子どもから大人へ成長してゆくなかで生まれる、自分のもどかしい気持ちを【親知らず】というキーワードによって表現しているこの歌。ちなみに【親知らず】とは、大人の奥歯で最も後ろに位置する歯であり、生える時期は10代後半から20代前半だそう。ゆえに、親に知られることなく生えてくるため、それが名前の由来となっております。

言えないことが増えるたび 大人になれた気がしてた
嘘が上手につけるたび 賢くなれた気がしてた

なにかを抱えていなきゃ 不安で仕方なかった
満たされないふりしたかった あの頃
真っ暗闇の奥に隠してた 痛みがありました
「親知らず」/関取花

 親に知られることなく生えてくる歯。同様に、親が知らない変化って他にもたくさんあるんですよね。学校での出来事。初めての恋。芽生え始めた夢。うまくいかない勉強。自分の心身に対するコンプレックス。人間関係の悩み。などなど…。でも、思春期とは“親から離れたいという欲求”が高まる時期です。だから<言えないことが増えるたび><嘘が上手につけるたび>きっと“自立力”がついているような気持ちになるのでしょう。

 さらに【親知らず】のことを英語では【wisdom tooth】と言い、【分別】や【知恵】がつく年頃になってから生えてくる歯であることに由来しているんだとか。しかし【親知らず】が生えてくるとき、痛みを感じる場合があるように、心の成長にも痛みを伴うことを、この歌は教えてくれます。たとえば<なにかを抱えていなきゃ不安>で<満たされないふりしたかった>…それは幼い頃には感じることのなかった、初めての<痛み>です。

あなたの知らないうちに あなたの知らないうちに
大きく育ってしまった 親知らずが
ズキンズキンとうずくたび あなたのせいにしたくなり
扉の鍵を閉めました
「親知らず」/関取花

 いくら“自立力”がついている気になったところで、初めての<痛み>は自分でもどうすればいいかわかりません。かといって<あなた>に痛みを上手く説明することもできません。そう葛藤しているうちにも【親知らず】のように心は<ズキンズキンと>うずく。その痛みを<知らない>でいる親にイライラする。自分のことをわかってくれない『子の心、親知らず』だと感じる。そんな感情が<扉の鍵を閉めました>というワンフレーズから伝わってきます。

大丈夫と聞かれては 放っておいてと言った
知らないくせにと突き放した あの頃
それでもいつもあなたに見透かされてた
痛みがありました

あなたに言えないうちに あなたに言えないうちに
大きく育ってしまった 親知らずが
ズキンズキンとうずくたび あなたの顔を思い出し
夜に紛れて泣きました
「親知らず」/関取花

 ただし、この「親知らず」の歌詞は、すべてが過去形になっているのです。つまり<あの頃>より少し大人になった主人公が【親知らず】だった自分を今、改めて見つめているのです。そしてやっと気づいたのは、どんなに<放っておいて>と言っても<知らないくせにと突き放し>ても、結局は<いつもあなたに見透かされてた>んだということ。『子の心、親知らず』ではなく『親の心、子知らず』だったんだということではないでしょうか。

素直になれないくせに 優しくなれないくせに
大きく育ってしまった 親知らずが
ズキンズキンとうずくのは あなたに言えない言葉を
ぎゅっと噛みしめるからでした
「親知らず」/関取花

 歌の冒頭では、自分のことだけを考え、自分のためだけに痛みに苦しんでいた主人公。だけど終盤では“親の心を知らなかった自分”=【親知らず】だった自分が<あなた>のことを想い、その痛みを噛みしめているかのように感じるのです…。 今、誰にもわかってもらえないと思う心身の痛みを抱えている方。それを他者に話すのは簡単なことではないでしょう。でも、それでも、心の扉の鍵を開けて、一番身近な人にその痛みを伝えてみてはいかがでしょうか。

 その人もかつて、同じ痛みを経験してきたのかもしれません。話してみたら、あなたの気持ちをちゃんとわかってくれるかもしれません。気持ちを言葉にすることで<ズキンズキンとうずく>痛みが、どうか今より少しでも和らぎますように…!
思春期真っ只中の子どもたちだけでなく、子育てをしているママやパパの心にも突き刺さる1曲…!
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