怪我の功名と言えれば

 2024年5月29日“リアクション ザ ブッタ”がベストアルバム『REACTION THE BEST』をリリースしました。今作には、TikTokで話題沸騰中の「ドラマのあとで - retake」をはじめ、新曲を含む全13曲を収録。さらにCDパッケージにはBonus Track「ヤミクモ (2024.03.17@SHIBUYA CLUB QUATTRO)」が限定収録されております。
 
 さて、今日のうたではそんな“リアクション ザ ブッタ”の佐々木直人による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、初のメジャーリリースとなるベストアルバムを放つ今の想い。そして、結成17年の軌跡のなかで経験した“心の怪我”のお話です。今作と併せて、エッセイを受け取ってください。



今年で僕たちリアクション ザ ブッタは結成17年目を迎える。
決して順風満帆とは言えないバンドの歩みだが、幸運なことに僕らの音楽を好きで応援してくれる方々に幾度となく出会ってきて今がある。
 
この度のバンドとしての初となるメジャーリリースも、SACRA MUSICの方と出会って実現したものだ。メジャーからアルバムを出す、というのはどういうことなのか最近少しずつ分かってきた。簡単にいうとCDを1枚リリースするために、未だかつてない何人もの人が膨大な時間と労力を使って宣伝し、広めるために動いてくれている。
顔を見て挨拶を出来た方々も、氷山の一角であると思わされるほどの規模感だと感じている。
 
そのことを知れば知るほど、コアである僕たちバンド自身の意思と情熱がどれほど大事かを思い知らされる。きっと中身の薄いものは、リスナーに届かないどころかその手前のチームにすら届かないだろう。
今作はベストアルバムという形で新録したものは2曲なれど、選曲も曲順も、考え尽くした。新録の「ドラマのあとで - retake」、新曲「恋を脱ぎ捨てて」も自分達の持っているものを絞り尽くし最高濃度のものを録ることが出来た。絶対的な自信を持って世の中に送り出せる1枚になったと思う。
 
さて、少し話は変わるがバンドをやって17年の間、僕は一度も大きな怪我をしていない。例えば骨を折って入院したり、そんなことはメンバー誰1人としてなかった。幸運なことだ。
しかし、ある時僕は心の方の骨を折ってしまった。「ポキッ」という音は聞こえなく、ゆっくりじわじわとした疲労骨折だ。自分自身を否定し続けた結果だと思う。その時は、あえて自分の骨を折ることで新しい自分になれると信じていた。だからどれだけ痛くても無視して痛めつけた。しかし結果として僕は新しい自分になれたわけではなく、ただの怪我人になっただけだった。
 
「生きづらい」とよく耳にしたり目にしたりするが、僕はこうなってみて初めて自分なりの「生きづらさ」を感じた。ただ、そこから見える景色は今までと少し違うもので、気づいたり発見したりすることも沢山あった。例えば、寝る前より朝起きた時のほうが息がしやすい、とか。
 
幸い僕は曲を書く人間だから、どんなことでも曲にしてしまえる。一度どうしようもないほどの闇が襲ってきた体験がある。その時のことも歌にした。アルバムの3曲目「Loopy」だ。この歌詞の好きなところは、いい意味で開き直っているところ。悪魔だって利用してやると言えちゃっているところだ。曲になると報われる気がする。
 
このアルバムは、いわばリアクション ザ ブッタの代表作だ。
とにかく色々なことがあって、その上で1曲1曲大切に紡いできた。
沢山の人に聴いてほしいという純粋な欲求が今もとめどない。是非とも1人でも多くの人に届いてほしいし、そうなってくれたら本当に嬉しい。
もしかしたらその時にやっと、怪我も功名だったと、言えるかもしれない。
 
<リアクション ザ ブッタ Vo& Ba 佐々木直人>



◆紹介曲「Loopy
作詞:佐々木直人
作曲:リアクション ザ ブッタ・宮田“レフティ”リョウ

◆BEST ALBUM『REACTION THE BEST』
2024年5月29日発売

<収録曲>
1 ドラマのあとで - retake
2 恋を脱ぎ捨てて
3 Loopy
4 リード
5 一目惚れかき消して
6 You
7 Colorful
8 虹を呼ぶ
9 仮面
10 オンステージ
11 Seesaw
12 Voyager
13 君へ
Bonus Track ヤミクモ(2024.03.17 SHIBUYA CLUB QUATTRO)