泡のような光たち

 2024年1月31日に“EASTOKLAB”が1stフルアルバム『泡のような光たち』をリリースしました。繊細で些細なこと、誰もが当たり前に通り過ぎてしまうこと、そんな儚い美しさを拾い上げて心を震わせ、喪失に手を振り前に進む。誰もが経験する日々の些細な一節。聴き終わったあとに、遠い昔の匂いを思い出すようなアルバムとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“EASTOKLAB”の日置逸人によるエッセイを3ヶ月連続でお届け! 今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作『泡のような光たち』というタイトルに通ずるお話。そして1stフルアルバムに対する今のリアルな気持ちを明かしてくださいました。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



言葉によって、形や意味が作られる。
 
例えば「無限」という言葉。
 
僕らはそれを知っているようで、本当の「無限」は知らないような気もする。
 
この目で「無限」を見たことがないし、実は無限のものなんて何一つなくて、全てに限りがあるのかもしれないから。
 
「泡のような光たち」
 
光は数えられないし、何億光年も先からだって届くから、もしかすると無限なのかもしれない。
 
そして、胸に灯る温もりも、パッと心が明るくなる瞬間も、光みたいな感触を持っている。
 
そうだとしたら光だけは、どうか無限であってほしいなと思う。
 
泡のように繊細で、いつかは弾けてしまう、限りなく無数の光。
 
CDの盤面に反射するように踊る光。
 
もう消えてしまわないように、無限に届くように、ここに閉じ込めてしまいたかった。
 
 
光とか、宇宙とか、未来とか、そんな不確定で触れられないもののことばかり考えていた。
 
宇宙の広さを知ることは、自分の小ささを知ることであって、未来を思い描くことは、過去を見つめ直すことと表裏一体だ。
 
どれだけ歩いても辿り着けないような、遥か遠くで軌道を周回する人工衛星が、僕自身の生活を便利にしてくれているなんて、何だか変な話だなって思うし、あの頃どれだけ考えても遠く朧げだった未来に、いつのまにか辿り着いているなんて、また変な話だなって思う。
 
数年前にフルアルバム作ろうとしていたときは、それが完成してリリースされる未来のことなんて何ひとつ見えてはいなかったのに、これを書いている今からあと数日で、初めてのフルアルバムがリリースされる。
 
今回の制作は紆余曲折色々なことがあり、なんか逆に思い入れがない。
 
一つのテーマに集約したということもなく、制作時期も分散されていて、失速してしばらく作らなかった期間もあった。
 
ワンテーマに絞って作ったけれど、全部ボツになったこともあった。
 
それでも4人で集まれば音が鳴って、結局は自然と曲が生まれてくるから不思議だなと思う。
 
アルバムが完成して、いつもの家に戻り一通りだけ聴いてみた。
 
とても遠くで鳴っているような気がして、それでいて心の中心で鳴っているような気もした。
 
この音楽が、聴いてくれた人の心を通り過ぎるとき、何か小さな傷をつけてくれたらいいなと思っている。
 
そして、最近また新しい曲を作り始めている。
 
音楽が通り過ぎていくのと共に、僕も何かを追い越して、何かに追い越されていく。
 
<EASTOKLAB・日置逸人>


◆1stフルアルバム『泡のような光たち』
2024年1月31日発売
 
<収録曲>
1. Dawn for Lovers
2. Error
3. Lights Out
4. 栞
5. Faint Signal
6. Melt
7. See You
8. うつくしいひと
9. Echoes
10. Our Place