僕は僕が幸せじゃないとは思えないんです。

 2023年11月22日に“シンガーズハイ”が1st Full Album『SINGER'S HIGH』をリリースしました。全会場SOLD OUTで終えた「DOG」ツアーで、さらにキレと立体感を増したサウンドの今作。自身のバンド名をアルバムタイトルに付けるなど、勝負の1枚となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“シンガーズハイ”の内山ショートによる歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は第1弾です。精力的にライブを行うなかで書き上げてきたアルバム収録曲たち。その制作過程で感じた、自身が本当に描きたいものとは…。



バンド史上初、というか生きてて初、セルフタイトルのフルアルバムをリリースします。形式ばった文章になってしまうのも少し小っ恥ずかしいですが、初めては1回きりなのでしっかりしていきたいです。
 
今年に入ってから、ワンマンの追加公演、対バンツアー、クワトロツアー、DOGツアーとグルグル回り、その度に違うフロアの面々や変わらず居る人達とどう向き合っていこうかとばかりを考えていました。喋り過ぎだと怒られたこともありましたが、それくらい意識が前の方にありました。そんな中で書き上げた曲たちはこれまでの中でもより素に近く、よりパーソナルな部分に触れられるようなものになったんじゃないかなと思います。
 
四半世紀生きてきましたが、振り返らないことってのは本当に難しいですね。あの時こうしていれば、逆にこうしなかったら、あの頃の自分に何が足りなかったから、と今となっては意味もないことを毎日繰り返して止まらない。時間の不可逆性がそうさせるのか、取り返せないあの時間はどんなものよりも価値があったように感じてしまう。
 
ここまで反芻思考に囚われてると最早鬱陶しいんじゃないでしょうか。周りの人たちを見ながらもっと自分勝手に生きられたらと羨ましくも思います。それでも例え無意識的にでも人を傷つけたり利用したりはしたくない。その結果どこにも行けず、ジタバタと部屋でのたうち回るだけの生活をしている。
 
ここまで散々話してきましたが、僕はこの溢れ出る負の感情に対して、「それでも音楽で」といった変換の仕方はしたくないんです。それを綺麗事だなんて突き返すようなことは思わないし、そうできたらどれだけ幸せなことかと思うけど、少なくとも僕にとってこのマインドは根本的な解決にはなってくれませんでした。
 
これだけネガティブアピールをしていても結局、僕は僕が幸せじゃないとは思えないんです。正も負も、幸も不幸も、希望も絶望も自分の中で共存しうるものなんだなと日々感じる。今の僕に必要なのは、自分の中がどんなネガティブに溢れていようと、それを抱えたまま幸せになるにはどうすればいいか、変わらないままでも満たされることをどう思い描くか、そういう姿勢なんじゃないかなと、このアルバム制作を通して感じました。
 
伝わってくれたら嬉しいけど別に伝わらなくてもいい。このアルバムはそういうつもりで作ってきました。聴く人なりの解釈で世界を広げていく、そういう一枚になればいいなと思っています。
 
<シンガーズハイ・内山ショート>


 
◆1st Full Album『SINGER'S HIGH』
2023年11月22日発売
 
<収録曲>
M-1 愛の屍
M-2 グッドバイ 
M-3 パンザマスト
M-4 かすみ
M-5 Kid
M-6 サーセン
M-7 daybreak
M-8 ノールス
M-9 SHE
M-10 Soft
M-11 フリーター
M-12 climax