海沿いを走り、行きつけのガソスタに。

 2023年4月26日に“松本千夏”がニューシングル『となりあわせ』をリリースしました。タイトル曲はTVアニメ『おとなりに銀河』のオープニング主題歌で、松本千夏初のアニメ主題歌、初の書き下ろし楽曲に挑戦した、記念すべき楽曲。ふたりの恋模様が浮かぶような、キュンとする恋心を書いたリリックと、ハートフルなアニメ作品のスタートを飾る、爽やかなメロディーが合わさった1曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“松本千夏”による歌詞エッセイをお届け。第1弾は今作の収録曲「ガソスタ」にまつわるお話です。イヤな夢を見てしまった日、バイクを走らせ、行きつけのガソスタでふと嗅いだ匂いで思い出したのは…。歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



すごく幸せを感じた日の夜、何故か不幸な夢を見る。
 
見知らぬ誰かに殺されたり、家族が死んだり、好きな人に振られたり、ゾンビに顔から食べられてしまったり。心の奥底で、何かを恐れているのかもしれない。そして、ゾンビは、絶対に最近見ているウォーキングデッドのせい。
 
しょうもない夢に今日も惑わされて、涙目で起きてしまう自分にうんざりする。
 
背中にかいた嫌な汗をシャワーで洗い流して、お気に入りのシャツを羽織ってバイクに跨る。
そして、目的地もなく走らせてみる。
 
車体は重いのに、走らせると軽くて、本当にどこまでも行けそうだ。
気分を良くした単純な私は、何も無かったように、ただ気持ち良く風を受けて走っている。
 
海沿いを走り、行きつけのガソスタに。そしていつものお兄さんに「レギュラー満タンで」って伝える。
 
ふと嗅いだガソリンの匂いで、つい元恋人が頭を過ぎった。ガソスタで働いていた彼はいつも油まみれ。「油くさいよ」と伝えると、匂いを気にする素ぶりもそうだし、この匂いも好きだった。
 
このお兄さんにもきっと大切な人がいるんだろうな、なんて勝手に想像してたらもう満タンになっていた。
 
帰り道、あともう少しで家。
気づいたら、心まで満タンになっている。
 
人と人が、いつ出会っていつ別れるかなんて誰にもわからない。
好きになったり、嫌いになったり。
風みたいに、気まぐれだ。
 
自分にできることは、今目の前にいる人を守り抜くことだと思う。
 
どれだけ嫌な夢をみたって、また一日が始まる。
どれだけ人と別れても、また出会う。
 
そんな人生という名の道のりを、寄り道しながら、謳歌していきたい。
 
<松本千夏>


◆紹介曲「ガソスタ
作詞:松本千夏
作曲:松本千夏

◆ニューシングル『となりあわせ』
2023年4月26日発売

<収録曲>
1.「となりあわせ」
2.「ガソスタ」
3.「めんどくさい」

◆ワンマンライブ「歌って」
2023年8月13日(日)
池袋 Club Mixa
OPEN 17:30 / START 18:00
\3,900(税込)/オールスタンディング
Lコード:71745
チケット発売中