歌詞の内容って実体験なんですか?

 2023年3月8日に“ズーカラデル”がMini Album『ACTA』をリリースしました。2022年にリリースした「ピノ」「ダダリオ」「都会の幽霊」に加え、新曲4曲を含む全7曲を収録。タイトルの『ACTA』は、ゴミや塵を意味する“芥”が由来であり、日々生活する中で切り捨られてしまうような感情を掬い上げて紡いだ作品となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ズーカラデル”の吉田崇展による歌詞エッセイをお届け! 彼が質問されて困る「歌詞の内容って実体験なんですか?」という問い。正しく伝わるように説明するなら…。その答えを改めて、正直に、丁寧に、綴っていただきました。



「歌詞の内容って実体験なんですか?」という質問をされて、困ることがたまにある。
 
“なんとなくその場を繋ぐのに丁度良い質問”として投げかけられているということは分かるのでサラッと答えたいのだけれど、話が下手なので「実際に体験した、という意味では実体験ではないのですが、歌の結末として描かれた感情は私が確かに感じたことがあるもので、しかしそれらは脳内物質によって引き起こされた虚像なので…」とかモニョモニョ喋っていたら、ああ、本当に興味が無さそうな顔をしている。
 
本当はこっちだって「全部妄想です」とか「目の前で起こったことを紙に書き写すだけです」みたいなシンプルでポップな回答をしたいのだけれど、嘘をつくのも良くないので、仕方なく正直に話す。正しく伝わるようにすると、話がどんどん長くなってゆく。
 
「歌詞の中の登場人物にはそれぞれモデルがいて、それは現在、あるいは過去の意中の女性だったり、友人、家族、SNSや道ですれ違っただけの知らないおじさんという場合もあります。
 
この人々はほとんどの場合、完全な姿では曲中に登場しません。例えば、これは実際に私が書いた曲なのですが、歌詞のある行でかつての恋人が現れて、再び私の前から立ち去って行く。かと思うと別の行では、彼女はテレビの中でしか見たことのない見目麗しい女性の姿になって私に微笑みかけるのです。
 
こうやって少しずつ折り重なったばらばらのイメージがサウンドと混ざり合うことによってひとつの像を結ぶといった塩梅です。
 
曲中では男性が女性として登場したり、その逆もあります。彼らと私が現実とは違う関係を持つこともあります。先程“かつての恋人”という例を紹介しましたが、そのモデルになった方とは私、一度も交際したことはありません。
 
他にもロックンロールだの夢や友情だのといった概念を擬人化して登場させる場合もあります。彼らは皆この虚な世界で確固たる“個”を持ち続けて生きているので、とても鮮やかに物語を紡いでくれます。それを敢えて腐してあげるのも楽しいです。全ての物事は一面的な視点で語り尽くせるものではないですから。
 
あるいは道端の石ころや架空の獣、原子力発電所の歌なんかも書いたことがあります。石ってなんか泣けませんか? そうでもない? ええそうですか。人にはそれぞれ感性がありますからね。ところで歌詞における意味の連続性が…

<ズーカラデル・吉田崇展>


◆4th Mini Album『ACTA』
2023年3月8日発売
配信サービス一覧:https://jvcmusic.lnk.to/ACTA
 
<収録曲>
1. シアン
2. ラブソング
3. 怪光線
4. ダダリオ
5. ピノ
6. 流星群
7. 都会の幽霊

◆『ACTA』全曲Teaser