自分の気持ちとすれ違ってしまう歌詞に本当の情熱は乗せられない。

 2022年1月12日に“鞘師里保”が、2nd EP『Reflection』をリリースしました。今作は、1st EP『DAYBREAK』(=夜明け)で昇った太陽が、水面地上を照らす“光の広がり”を表しております。また、1st EPの作家陣に加えて、NiziUなどへの楽曲提供が話題のKanata Okajimaや南カリフォルニア育ちのシンガーソングライターMichael Kanekoが初参加。全5曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“鞘師里保”による歌詞エッセイをお届け!今回は【前編】です。綴っていただいたのは、歌詞について、言葉についての想い。そして今作の収録曲「Take a Breath」のお話。歌のグルーブ感を大事にするため、こだわったワンフレーズとは。是非、歌詞と併せてエッセイをお楽しみください。



はじめまして! 鞘師里保です。歌ネットさん、いつもお世話になっています。たまに自分の歌詞を検索させて頂いたりなどもします。
 
私は昨年からソロで音楽活動を始め、同時に作詞を始めました。
 
私は歌を届けたりパフォーマンスをするとき、自分が心からワクワクしたり、内側からエネルギーや感情を生み出しながら歌い踊ったりすることが出来ているのか。それをとても大事にしています。それが大きければ大きいほど、見ている方にも強く訴えられるのではないかと思います。
 
だからこそ、自分がこのテーマを、この言葉を届けるんだと。言葉を選んでゆく作業は大切にしなければいけません。
 
私はまだ詞を書き始めて間もないので、今後、言葉に関しての考え方は変わっていくと思います。
 
そんな中、今の時期だからこそ意識しているのは、きちんと感情の深部からの言葉を書き出す事。
 
自分の見たくない部分と向き合わなきゃいけない瞬間も多いので、少し辛くなったりもしますし、歌詞の提出がすごく恥ずかしくなっていってしまうんですけどね。
 
いつも詞が完成すると思い切ってマネージャーさんにデータを送るものの、のちに何人ものスタッフの人達に読まれる事を冷静に想像して、何度も送信取り消しをしてしまう。などしてしまいます。。
 
それでも、自分の気持ちとすれ違ってしまう歌詞に本当の情熱は乗せられないと思うので、いつも恥ずかしい気持ちと戦いながら言葉を選んでいます。
 
 
そんな私ですが、1月に2nd EP『Reflection』をリリースしました。せっかくなので、この機会に数曲ピックアップして少し楽曲のメッセージを深掘りさせて頂いたり、私がどんな方法で作詞をしているのか知って頂く機会になればと思います。
 
今回は、EPの2曲目に収録されている「Take a Breath」について。
 
同じような毎日の生活の息苦しさから抜け出して、一息つきたい。という曲。
 
歌詞の中では、自分と君が登場します。君という存在のおかげで、日々をひっくり返すきっかけを見つけ、ふたりで夜通し自ら気持ちの赴くまま走る。
 
勿論、人それぞれ心地よいと感じる生き方は違うけれど、もし今の状況から抜け出したいのに、色々と細かい理由があるのだとしたら、また何か別の理由を作って一度逃げ出せばいい。何かひとつ自ら大きく行動できた時って、少し自信がついて強くなれた気がすると思うんです。動き出せた時のそんな気持ちを後半では表せたらなと思いました。
 
この曲は聴いていただくと分かると思いますが、ファンクなダンスナンバーになっています。リズム感を歌い方でも伝えられるように。ということをまず頭の片隅におきながら作詞しました。
 
楽曲制作の際、曲先行と詞先行(同時の方もいらっしゃるかと思いますが)と方法があるのですが、作曲の宮野さんとは、前作の「Find Me Out」を詞先行、今作「Take a Breath」は曲先行で作っています。
 
とはいえ、作曲前から、曲のイメージや歌詞に入れ込みたいメッセージみたいなものは私から伝え、事前に細かく打ち合わせもさせていただきながら共有しています。それは他の楽曲も同様に行っていることが多いです。
 
曲先行で、楽曲のデモが来る段階には、曲の世界観をイメージしやすいように、そして詞が書きやすくなるように、英語風の仮歌を入れて頂いている事が多いのですが、今回の場合、キャッチーなフレーズの部分は、デモの時から既に出来ているようなものでした。
 
♪ I want to take a breath~
 
♪ Everything's gon' be alright
 
この辺りは、ほとんどデモのままです。先述したように、曲のテーマは事前に話し合いをしているので、書きたいことのイメージは元々持ってはいたけれど、こうして引っ張っていってくれるようなフレーズなどがあると、広がっていきやすいし、すごく助かります。
 
勿論、それでも昼間に書いたり夜中に書いたり、、
たっぷり時間を使って書き上げました。
 
ちなみに、その
♪ Everythig's gon' be alright~
の部分なのですが、
元々は、よく使う短縮系の文法で、
♪ Everthing's【gonna be】alright
にしていました。でも、これだと歌う時に、「ゴナビー」or 「ガナビー」になるんです。
 
そうするとどうなるかというと、言葉の歯切れが良すぎて、私の場合、歌のグルーブ感が途切れてしまうんですね。ただ、これ以外の言い回しを知らなくて、自分の歌い方の意識で気持ちの良い部分を探そうとしていました。
 
そして、レコーディングの日が直前に近づいてきたある日、違うアーティストの歌を口ずさんでいたときに、たまたま、今Gonna be alright的なことを言っている。でもgonna be ではない!なんだろ! という瞬間があったんです。
 
急いで検索したら、【gon' be】と書いてありました。これだったら「ごぉ~n びー」って歌うことができる!途切れない!
 
奇跡的な出会いをすることが出来ました。どうしようかずっと悩んでいたので、凄く喜んだ記憶があります。
 
英語も色々あるんですね。「いらっしゃいませ~」が次第に「っしゃっせ~」になる。みたいな感じでしょうか。
 
もしよかったら、歌い比べてみてください。印象が変わると思います。
 
他にもこの曲は、意外と歌い回しが難しい部分が多くて、私が特に気をつけてレコーディングで歌ったのは、
 
♪ひたすらループして daze daze daze~
の「ひたすら」のリズムです。
 
イメージ的には「ひたっすら」という感じなのですが、「っ」を意識しすぎるとリズムに遅れてしまうので、ぜひ気をつけながら、歌ってみてください。
 
リズムに乗りこなせたら、とても気持ち良いです。
 
次回は、更に2曲くらいについてお話できればと考えています。よかったらまた読みに来てください。

<鞘師里保>



◆紹介曲「Take a Breath
作詞:鞘師里保・宮野弦士
作曲:宮野弦士

◆2nd EP『Reflection』
2022年1月12日発売
 
<収録曲>
1.Go-by 
2.Take a Breath
3.Melt 
4.Baby Me
5.Winding Road