始まりはそう、鼻歌なんです。

 2021年6月9日に“GOOD ON THE REEL”が『花歌標本』をリリースしました。結成15年目に放つ4年ぶりのフルアルバム。今作は“あなた”と“わたし”といった、身近な存在に対する想いを描いた楽曲が多く収録されております。15周年を迎え、ゼロから新たな自分たちの音楽を創りあげ、歌詞を付け、標本のように形あるものとして残したい、音楽に定義付けをしたい、そんな想いがアルバムタイトル『花歌標本』に託されております。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“GOOD ON THE REEL”の千野隆尋による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回はその第1弾です。綴っていただいたのは、今作『花歌標本』というタイトルに込められているもの。曲が“卵”の段階から、どのようにわたしたちの手元にたどり着くのか。是非その過程を彼の言葉でお楽しみください。

~歌詞エッセイ第1弾:『花歌標本』~

よくライターさんから、「どのように曲を作られているんですか?」とか「詞先ですか?曲先ですか?」なんて質問を受けます。

楽曲の作り方って人それぞれどころか、その人の中でも色んなパターンがあると思います。有名な話だと、夢の中でできたって曲もあるくらいですから。でも根本的には、詞先にせよメロ先にせよオケ先にせよ夢先?にせよ、始まりはそう、鼻歌なんです。

天気や気分、景色や感情、言葉、コード、あるいは体温、様々な環境や刺激の中で、何かが自分と受精して鼻歌になる。それが卵。弱々しく、時に猛々しく。

さぁ、そこでせっかく産まれた卵をどう孵化させるか。卵にだって色んな種類があるように、卵の管理にだって色んなパターンが存在します。温めるしかり、口の中に入れておいて敵から守るとか、他の卵と取り替えて育ててもらっちゃうとか。

数多の方法があるから当然孵化しない卵、鼻歌も出てきます。記憶から食べられちゃうような、昔のデータすぎて見つけられないようなね。その中でも選ばれて、ギターをつけてみたり、ベースをつけてみたり、ドラムをつけてみたりされたものが、ここでいう孵化できたってケースですね。

そこからは育成期間です。どんなリズムにするのか、どんなフレーズをつけるのか、何をメインにするのかとかね。それによって姿形が変わってきます。宝石のように美しい蝶、近づくな危険スズメバチ、甘い蜜に群がるカナブン、どっしり構えたカブトムシ、、、。

楽曲もそうして成虫となりますが、そこでも選別が行われます。成虫になったからといって、バンドとしてはなんでもかんでもよしとはしないでしょ? だからライブで披露されたりされなかったり、お蔵入りになる曲もあるわけです。

しかしながらその中でも選ばれた成虫、1人じゃなく5人で悩んで選んだ楽曲達が、やっとこさCDという形で標本になるんです。ジャケットや歌詞カード、そういったデザインも含め、今の僕らの形を残すんです。長くなりましたが、そういった意味を込めたのが今回のアルバムタイトル『花歌標本』です。

今の僕らの楽曲を標本(CD)として残すことで、聴いてくれた誰かの未来に、微笑むように咲く鼻歌があることを願っています。

<GOOD ON THE REEL・千野隆尋>

◆4thフルアルバム『花歌標本』
2021年6月9日発売
初回限定盤 POCE-92118 ¥4,000(税抜)/¥4,400(税込)
通常盤 POCE-12164 ¥3,000(税抜)/¥3,300(税込)

01 あとさき
02 交換日記
03 虹
04 35°C
05そうだ僕らは
06 オレンジ
07 そんな君のために
08 ノーゲーム
09 目が覚めたら
10 標本