坂口有望

漠然とした怒りを漠然としたまま終わらせないでよかった。

 2020年11月4日に“坂口有望”がニューシングル『セントラル』をリリース!タイトル曲は、TVアニメ『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』ED曲として書き下ろされた1曲です。儚さと力強さを併せ持った歌声で彩られ、柿澤秀吉(秀吉)による疾走感溢れるアレンジも魅力のシリアスロックチューン。また、コロナ禍をテーマにしたEDMナンバー「2020」、寒くなる季節にぴったりのセンチメンタルなバラード「クリスマスエレジー」、2曲のカップリングにも注目…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“坂口有望”による歌詞エッセイを、3ヶ月連続でお届けいたします!今回は第1弾に続く第2弾!綴っていただいたのは、今作の収録曲「2020」のお話です。2020年、世界中を変えてしまったウィルス。わたしたちの心に広がっていった怒りや不安、無力な想い。彼女がコロナ禍で抱いた本音を明かしてくださいました。是非、歌詞と併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ第2弾:「2020」~

さて、エッセイ第二弾。前回のエッセイ「セントラル」が好評でとても嬉しい。媒体は違えど、わたしの作品であり、わたしの一部だから。

物心つく頃には、誰にも見せない秘密のポエムノートがあった。そこには、汚い字で「今日のそらは今日しかみれない」と短い詩がいくつも書き留めてあった。わたしは人より「思いを言葉にする」という作業に時間がかかる性分で、その場で言えなかったことは、後でじっくりノートに書いた。わたしが言葉にこだわるようになったのは、その習慣からかもしれない。時間をかけて、複雑な感情を文字におこしていく。

「2020」という楽曲も、その工程の連続だった。3月から予定していた全国ツアーが中止になり、ライブが生きがいであるわたしは余命宣告されたような気分だった。得体の知れないものに対する爆発的な怒り。それがこの曲のテーマであり、その怒りとはどういうことか?と自分の気持ちを紐解いていく中で、すらすらと筆が進んだ。

2020年、東京オリンピックに日本中が歓喜と賑わいに溢れるはずだった。権力がある人も、海を越えた先でも、みんな、生活の不自由を余儀なくされた。特に、エンターテインメント業界は公演の実施に関して、あくまで政府からは強制ではなく自粛要請、中止の道を自ら選択するしかなかった。そうして、自粛生活がはじまり約1ヶ月がたった頃、一人暮らしの小さな部屋で、ぶつける場所のない鬱憤はとうとうキャパオーバーしかけていた。「今日は本当ならあのライブハウスで歌ってたんやなぁ」「リハーサルで試したこのフレーズがすごく良かったんやけどなぁ」沢山のことを考えたけれど、わたしがなにか行動しても変わる状況ではないと気づいていた。

ずっと感傷に浸るわけにはいかない。家でできることをすればいいという発想に何とか辿り着いた。そして、わたしのツアーを楽しみにしていた人のためにもSNSで歌を届けるようにした。色んなミュージシャンに声をかけて、リモートでコラボしたり。それと同時期に、ミュージシャンとして、今の気持ちを歌にしようと思った。異常な年、2020。読み方を「ニーゼロニーゼロ」にしたのは、東京オリンピックで定着した、希望に満ちたはずの「トーキョー!ニーゼロニーゼロ!」を皮肉る形にしたかったからだ。サビのメロディーは歌詞と一緒に降りてきたもので、「怒り」が音になって消化されたような気がした。いつかこの曲をライブでお客さんと一緒に歌える日が来たら、少しはコロナが嫌いにならないかもしれないとさえ思った。

そして完成したこの曲は、11月4日のCD発売から先行で7月に配信が始まった。それは、自粛中の人々にいち早く届けなければと、わたしの曲に込めたメッセージを汲み取ってくれたスタッフチームと出した答えだった。ついに、地元大阪での有観客ライブを11月6日・7日に控えた今、この曲は既に懐かしい感情になっている。漠然とした怒りを漠然としたまま終わらせないでよかった。

この曲は歴史の教科書の1ページのように、わたしの2020年を表現した作品として残る。ちゃんと「言葉にする」ことをこれからも続けていきたい。

<坂口有望>

◆紹介曲「2020
作詞:坂口有望
作曲:坂口有望

◆ニューシングル『セントラル』
2020年11月4日発売
初回生産限定盤 ESCL-5448~49 ¥2,000(tax in)
通常盤 ESCL-5450 ¥1,300(tax in)
期間生産限定盤 ESCL-5451~52 ¥2,000(tax in)

<収録曲>
1.セントラル
2.2020
3.クリスマスエレジー
4.セントラル -TV Size-(期間生産限定盤のみ収録)
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