作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! 今回は、代表作に「ユラメク」「それがあなたの幸せとしても」「Strangers」などを持つボカロPの「Heavenz」さんをゲストにお迎え…!
作詞論

詞は小説のように多くの言葉を紡げるわけではなく、歌う為の言葉でもあるので音程や言葉の区切り方など制約が多い文章です。

ですが、メロディーや伴奏があって、それを聴いた時の場面や環境・時代も相まってとても人の心に残りやすい物で、だからこそ、この限られた文字数でどれだけ想いを凝縮させる事が出来るかが真髄であり、面白い部分だと思います。

自分が書く歌詞が、どこか人生の一部であったり支えであったり、その人の心を豊かにする一つになってくれたらいいなと願います。
[ Heavenzさんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    VOCALOID楽曲を制作し始めた時に、書いたのが初めての作詞でした。
    ボカロがこの世に出た事で、生楽器も生歌も使わずDTM上で全て仮想の音が鳴るスタイルに
    面白さを感じたので、歌詞でも何かそういう部分を表現したいと思ったのがきっかけだったと思います。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    一番多いのは、SNSやコメントが見れるようなニュース等、
    起こった事と人々の反応が見られるような媒体を見る事です。
    簡単に解決・答えが出ない問題や、賛否両論があるものをテーマにすることが多いです。

    そういうテーマの作品も多いので、映画やドラマ、漫画、ゲーム等から共感できた考えを元に、
    自分なりの答えを見つけて書く事もよくあります。

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    メロディーの譜割りを特に意識しながら、響きと意味の良い言葉が浮かんだ所から
    穴埋めしていく感じです。
    リズムと語感は楽曲において何よりも大事なので、その上で良い表現が作れたら優勝です。

    あとは、タイトルになりそうな一番言いたい事や目を惹く一文・一語が出たら
    そこから広げる場合もあります。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    基本的には、楽曲制作している音楽環境と同じ場所で書いています。
    自分の曲以外の音が聴こえない場所が理想です。

    悩んだ時は散歩したり、部屋の中を歩き回ったり、布団をかぶって蹲っていると浮かんだりします。
    自分の状態や環境に新鮮さがあると冴えるのかも。

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    ペイメント」という楽曲の歌詞を書いてる頃、ちょうど友人とタイに旅行へ行っている時で。
    個人的には趣味ではないですが夜の町を観光していた際に、水槽のようなガラス張りの中に
    女性が並んでいて、誰かを選ぶという光景を目にして衝撃を受けました。

    好きなVOCALOIDのパッケージを選んで購入するような感覚と結びつけ、なるべく詞的に表現しようとしたのが一番思い出深いです。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    譜割りのリズム感と語感が良く、それでいて内容がしっかりしている物が良い歌詞かなと思います。
    内容に関しては表現がお洒落で、考察しがいがあるような考える余地がある言い回しや、
    読み進めるにつれて意味が180度変わるような表現も素敵だなと思います。

    あとは、日本語の歌詞なら日本語の美しさや表現力、可能性みたいなものが
    大事にされていると良い歌詞かなと感じます。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    ノンフィクション/平井堅
    生死を身近に経験した人が書ける本当に優しい歌詞だと思います。
    リアリティのある重たい表現と苦しい現実に対する感性が書かれた中で、会いたいという想いが
    とても沁みました。

    ただ会いたいというのは、独りでどうしようもなくなった人がギリギリで絞り出せる言葉なのだと思うし、寄り添いたい人にとっても相手に一番届く言葉なのかなと感じます。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    夏の曲なら夏、冬の曲なら冬という、テーマに対してわかりやすい言葉をなるべく使わない事です。
    比喩する事で世界観や、表現したい幅が広がるように意識をしています。

    あとは、なるべく意図しない暴力的な表現はしないようにしたり、歌詞を見る人に与える影響みたいな事はどこか常に考えていると思います。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    書くテーマに対して自分の答えを何か見つけて歌詞に乗せることかなと思います。
    それはオリジナリティが出る部分でもあるし、その歌詞に出会った人にとって
    どこか支えや指針になるかもしれません。

    AIが一般的になってきた世の中ですが、心の通った人を想う作品が
    今後も大事にされていくのかなと感じます。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    書きたいという気持ちがなによりも大事です。
    書こうと思った時点で表現したい事がきっとあなたの中にはあるはずなので、
    その原動力と情熱が書きたい言葉になるのだと思います。

    そして、たくさん悩んで書いた歌詞には何か答えが見つかるので、
    それはあなたの感性を一つ広げて、次の原動力になるかと思います。

歌 手
巡音ルカ
タイトル
それがあなたの幸せとしても
今まで作ってきた中で、数少ない"降りてきた"歌詞です。サビから生まれた曲で、鍵盤を弾きながら、浮かんだメロディーと歌詞を泣きながら歌って作り進めていた事がいつまでも心に残っています。もし自分がこう言われたら心底嬉しいだろうな、と思う事を言葉にしたので 多くの方に共感していただいたり、どこか支えにしていただいている事がとても幸せです。辛という漢字に1つ線を引いて幸にするというのは、自分が歌詞を書いていく上で自信となる表現だったと今でも思います。
2009年よりVOCALOIDを使用した楽曲を動画サイトへ投稿し、処女作「ユラメク」が評価を得る。その後も良質なサウンドワークを起点に、ロック・ポップスからエレクトリック・テクノまで、広い音楽性と楽曲に寄り添う歌詞がリスナーの共感を呼ぶ。

書き下ろし楽曲提供やアレンジメント、サウンドプロデュースも精力的に行なっており、特にボーカリストへの提供曲は、アーティスト本人からの直接オファーが多く絶大な人気と信頼を得ている。