作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! さて、今回は、シンガーソングライターとして25年以上活動している「槇原敬之」さんをゲストにお迎え…!
槇原敬之
代表作
「どんなときも。」
「もう恋なんてしない」
「ANSWER」
「北風〜君にとどきますように〜」
「彼女の恋人」
「No.1」
「SPY」
「LOVE LETTER」
「素直」
「僕が一番欲しかったもの」

作詞論
その事柄にどれだけ想いがあるかで伝わる力が違う
自分にとって作詞とは?ということを改めて考えたことはないですが、作詞するときに大事にしている事はあります。まず一つ目は、どんな年齢のどういう生業の人が聴いても、その意味が同じように伝わるかどうか。

二つ目は、自分がちゃんと感じた事だけを書くことですね。何かとても壮大なテーマでなければいけないわけでもないし、どんな些細なことでもその中に驚きや違和感といった心の動きがあったものなら、それについてよく考えて書く事は心がけています。体よくまとめる事は簡単ですが、その事柄にどれだけ想いがあるかで伝わる力が違うように感じでいます。例えば僕は仏教の思想を基本に置いて書くことが多いのですが、せっかくの素晴らしい教えも自分の書き方次第では、正反対に伝わってしまうという事にもなりかねませんし、それでは意味がないわけです。なので、歌詞として美しさも重要だと思いますが、まずは書きたいと思った事柄についてとにかく考え抜いて、場合によっては実践をして「やっぱりそうだ!」と実感したものを丁寧に書き進めていきます。

三つ目は、歌詞を書くときに必ず誰かのもとにこの歌詞が届いたとき、笑顔になってもらえたり、勇気をもってくれたりする様子を思い浮かべて書くという事ですね。
[ 槇原敬之さんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    13歳の時、NHK FMでやっていた坂本龍一さんの番組があって、デモテープを送って坂本龍一さんに評価してもらうという番組があったのですが、YMOの大ファンだった僕はそれを聞いたとき「自分も出したい!」と思いまして、曲を作り始めたのがきっかけです。

    YMOファンでもあり、オフコースや大江千里さんも大好きだったので、自然と歌物にしようということになり、いろんな人の歌詞をまねて書き始めました。でも、いちばん最初に書いた歌詞は、リゾート地で女の子が気取って歩いていると波にのまれてでっかい悲鳴を上げてしまい、もう二度とここには来られないわ、だって私は名物娘だもの、的な歌詞だったなぁ。ぜんぜんオフコースでも千里さんでもない、ただの浪速のあほな少年丸出しですね。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    主に普通に人と話しているなかからが多いですね。人っておもしろいもので、すごく良い話をしているのに自分でそれに全く気が付いてないということが多いです。なので、そこから話を膨らませたりする事は多々ありますね。

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    サビから作る時もありますし、頭から書き進めるときもあります。ストーリーの進み方を映画のカメラワークのようにしたい場合は、大抵アタマから順に書き進めていきます。のっけから「このことを大きな声で言いたいんだ!!」ということがあれば、サビから書く事もありますね。

    僕はそれにメロディもつけるわけですが、不思議なもので、どんなに良い歌詞に思えても、ぜんぜんメロディが浮かばないというときもあるので、そういう時は内容を踏まえた上でもう一度最初から書き直したりすることも日常茶飯事です。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    出来ればおいしいコーヒーとチョコレートがあればいいなと思いますね(笑)あと、できるだけ静かじゃないところの方が集中できる気がします。犬がガシャガシャ遊んでいる音とか、テレビの音とか、人が話している声があるほうが集中しやすいかもです。逆にシーンと静まり返った場所にいると、「んぎ~~~っっ!!」となっちゃいますね。

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    楽曲にまつわるエピソードはそれぞれにありますが、そっと自分の中にしまわせてください。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    時と経験を重ねるほどに、真意が解き明かされていくような歌詞って素敵ですよね。こういうと、若い人の書く歌詞にはそれが無いように思われがちですが、そうでもないんですよ(笑)。書くべき人が書くなら、年齢は関係ないんですよね。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    aikoちゃんの「カブトムシ」。すごいなぁ〜と思いますね。甘い匂いに誘われてしまう、どうしようもない心をこう例えるか!って、感動しましたね。ほかにもユーミンだったり中島みゆきさんだったり、いろんな人のいろんな歌詞に「やられた!」がありますよねぇ。そういうものに触れられるとき、至福の喜びを感じますね。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    特にはないですね。強いていうなら、同意を求めるような言い回しはあまりしないかもしれないです。変な言い方ですが、感じてもらわないと意味がないと思っているからでしょうね。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    それが与えられたお題だったとしても、自分から発するものだとしても、自分が納得できるまで諦めずにとことんこだわる、という事ができるかどうかが大事だと思います。

    自分が納得いかないものを人様にお金を出して買わせることができるなら、クリエイターやアーティストになる必要はないのではないかと思います。逆を言えば、自分が納得いくものだけを作って生きていく事がクリエイターやアーティストと呼ばれる人たちに必要な覚悟であり、特権でもあるんですから。なんちってね。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    時にはインスピレーションに身を任せて、時には嫌というほど悩み考え抜いて、ひとつひとつの作品を一生懸命書いてください!

私の好きなあのフレーズ
思い入れは数え切れないほどあり、1曲、ワンフレーズだけを選ぶという事は大変難しいです。

シンガーソングライター。
1969年5月18日生まれ。大阪府出身。これまでシングル47枚、オリジナルアルバム21枚をリリースしている。1990年10月にデビュー。1991年には「どんなときも。」で自身初となるミリオンセラーを達成した。その後も「もう恋なんてしない」や「SPY」、「Hungry Spider」などヒットを連発。2010年に自主レーベル「Buppu Label」を設立以降も、ミュージカルへの楽曲提供や情報番組への書き下ろしなど、活動の幅を広げている。自身で作詞、作曲に加えアレンジまでこなす稀有なアーティスト。「世界に一つだけの花」(SMAP)など他アーティストへの楽曲提供も多数。
                                  公式サイト
INFORMATION



ニューシングル『記憶』
2018年10月10日発売
BUP-50007 ¥1,200(税別)

<収録曲>
1.「記憶
2.「記憶 Strings Version」
3.「Memories
4.「記憶(Backing Track)」
5.「記憶 Strings Version(Backing Track)」
6.「Memories(Backing Track)」