前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。先月はロングヒットを分析したので、今月は真逆に2014年発売の作品限定でヒット曲を追ってみた。
第55回:2014年限定人気曲TOP15  (2014年2月:2014年1月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 発売日
1位 8 100.0 女の子は泣かない 片平里菜 2014.1.15
2位 13 72.9 fish back number 2014.2.5
3位 16 55.5 My VOICE ファンキー加藤 2014.2.12
4位 18 50.8 スノーマジックファンタジー SEKAI NO OWARI 2014.1.22
5位 20 48.9 春風 Rihwa 2014.2.26
6位 21 47.8 TSUKI 安室奈美恵 2014.1.29
7位 25 40.2 モノクロ AZU 2014.1.29
8位 46 30.5 Back In Love Again 三代目J Soul Brothers 2014.1.1
9位 68 25.6 JSB Blue 三代目J Soul Brothers 2014.1.1
10位 70 25.0 チョコレート 家入レオ 2014.1.29
11位 71 24.9 PRIDE 三代目J Soul Brothers 2014.1.1
12位 75 24.3 ひびき 関ジャニ∞ 2014.1.15
13位 89 23.0 Forever Together 三代目J Soul Brothers 2014.1.1
14位 91 22.9 銀河街の悪夢 SEKAI NO OWARI 2014.1.22
15位 156 16.7 弱虫な炎 DIRTY OLD MEN 2014.2.19
次点 159 16.6 シンメトリー THE BACK HORN 2014.2.19

 1位は、昨年メジャーデビューした片平里菜の2ndシングル。女子力全開の歌詞で、一気に注目が高まった。相手をどんどん好きになっていく所や、失恋に負けぬよう強がる所など読ませる歌詞&聴かせる歌声が魅力。彼女のリピーターも増えそうだ。

 2位はback numberの9thシングルでデビュー前から温めてきたという失恋ソング。発売前からの歌ネット内での高い支持から「花束」を上回る代表曲にもなりそう。3位は、ファンキー加藤のソロ・デビュー作。FUNKY MONKEY BABYSよりも熱さや実直さが増したよう。ちなみに、2位のback numberとファンキー加藤、それに現在ダウンロードで大ヒット中のSPICY CHOCOLATEはすべて同じ事務所(イドエンターテイメント)所属で、人間味溢れる作品が共通しているのが興味深い。

 TOP15全体を見渡してみると、元旦に4thオリジナル&ベストアルバムを発売したJ Soul Brothersが4曲もランクイン。これまで、オリジナルアルバム発売時に、3曲以上ランクインするのはONE OK ROCKや嵐などごく限られたアーティストに起こる現象だったが、三代目JSBも今回のヒットでそのステージにまで上り詰めたということだ。実際、今市隆二と登坂広臣のツインボーカルが交互に歌う様子は、それぞれが個性的で安定した歌声を聞かせつつも、二人で攻めていく息もピッタリなので、聴いていても自然に耳に入ってくる感じで、先輩のEXILEにも、後輩のGENERATIONSにもない魅力を放っている。現在アルバムは30万セットの売上だが、着実に40万セットを超え、最終的には年間TOP10級のヒットになりそう。

 そして、最も注目すべきなのは、Rihwa(2作連続フジテレビドラマのタイアップ、ちなみにどちらのドラマにも出演する三浦春馬と同じアミューズの所属)、片平、安室、AZU、家入とTOP10に5人もの女性ソロの新曲がランクインしていることだ。しかも、片平、Rihwa、家入はいずれも若手の女性シンガーソングライターだが、タイプもバラバラ。つまり、CDシングルチャートでは依然として女性アイドルを中心とした複数買い(しかも、「5枚買った人にだけイベント参加券プレゼント!」など、ファンが喜んでそうしているというよりも、運営側が強制的にそうさせているものが多いのも困り者)が多く、ヒット曲が見えづらい状況が続いているが、ファンが重複閲覧を強制されない歌詞サイトでは、既に女性ソロのヒットがはっきりと見えているのだ。その意味で、今年後半に向けて、女性ソロ、特にシンガーソングライター系が活発になりそうな気配を感じさせる。このようなヒット現象がもっともっと世間一般に広がれば、音楽業界の真の活性化に繋がるのではないだろうか。

 以上のように、今年発売限定で人気曲を見てみると、ヒットの萌芽がたくさんあることが分かった。懐メロで過去の想い出に浸るのも良いですが、最新曲で未来の想い出を大切な人と作っていくのも楽しいですよね♪




女の子は泣かない/片平里菜

fish/ back number

My VOICE /ファンキー加藤

 昨年6月に解散したFUNKY MONKEY BABYSのリーダーのソロ・デビュー作。CDは2/12発売だが、1月から配信されている着うたでは週間1位を獲得している。本作は、離れた友に向けた力強いアッパーなエールソング。♪Ah悲しみを超えて 大きな声で「ここにいるよ」と歌ってるんだ〜の一節で、ファンキー加藤のケミカルやモン吉との別れ、ファンモンとファンとの別れを想い出すリスナーも多いことだろう。また、シングルのカップリングとなる「リスタート」は、不意に別れてしまった大切な人に向けたダンサブルなポップス。また「桜 ふわり ふわり」は、つきあいが一段落したカップルの男性が桜をキッカケに好きな気持ちを再確認するというミディアム・チューン。3曲とも、一人称は「僕」で、声も意図的なのか少年性が垣間見えるほど若々しいのが特長的。こうした部分からも、また現在積極的に行っている地方のショッピングモールでのフリーLIVEツアーからも、これまでの大きなキャリアに依存せず、新人歌手として頑張ろうという意気込みを感じさせる。ファンモンはJ-POP寄りのヒップホップファンからも多く支持されてきたが、今後はロックやフォーク、あるいはカリスマ性の高い男性ボーカルのファンを巻き込んでいくのかどうかにも注目したい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、5位の片平里菜に注目。彼女は、1992年福島市出身で、現在も福島在住のシンガーソングライターで、2011年の10代限定のフェス型オーディション『閃光ライオット』のファイナルステージに出演し、審査員特別賞を受賞、東日本大震災のあった半年後ということもあり、音楽メディア以外にも復興のシンボルとして大きく報じられた。その後2年間にわたって地道な音楽活動を続け、2013年8月にその時歌った「夏の夜」でメジャー・デビュー、オリコン初登場44位と1種類のCDで勝負する女性ソロとしては十分な合格ラインでのスタートとなった。
  今回歌詞検索数が大きく伸びたキッカケは、この1月に発売された2ndシングル「女の子は泣かない」が発売されたこと。島田昌典のポップでロックなアレンジは、誰もがaikoを想起するだろうが(微笑)、片平のちょっとかすれた声と失恋に強がる乙女心が個性的なので全体を聴けば気にならない。オリコンでは、こちらも1種類のCD発売で初のTOP20入りを果たした。各CDにはいずれも4曲ずつ収録されているが、ロック色の強い「Hey!boy!」から、シンプルな弾き語りの「ペンペン草」まで新人とは思えぬほど間口が広い。また、どちらも手書きを印刷した歌詞カードから実直な人柄が垣間見えるので、彼女の曲全体を好きになるファンも増えそう。それゆえ、現在は、表の通り「女の子は泣かない」に人気が集中しているが、今後大きく広がる予感がする。同じ所属事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)で同じく漢字四文字、そして同じ「りな」の住岡梨奈と共に、今年さらなるブレイクが期待される一人。

順位 占有率 曲名 初収録作品
発売日
1 83.8% 女の子は泣かない 2nd Sg タイトル曲 2014.1.15
2 3.5% 始まりに 1st Sg c/w 2013.8.7
3 3.3% 夏の夜 1st Sg タイトル曲 2013.8.7
4 3.1% Come Back Home 1st Sg c/w 2013.8.7
5 1.9% Hey boy! 2nd Sg c/w 2014.1.15



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 懐メロかノンストップDJでお得感をアピールして売れているコンピレーションCDが多い中で、あえて過去1年前後の新曲限定の選曲にこだわって出し続けているコンピレーション・シリーズ『アイのうた』。ハートマークのコンピレーションが大量に出回るようになったのも、この『アイのうた』の恩恵が大きいと思います。そんなシリーズ第6弾が昨年11月20日に発売されていますが、GReeeeN「雪の音」、ナオト・インティライミ「今のキミを忘れない」、ヒルクライム「想送歌」、C&K「アイアイのうた〜僕とキミと僕等の日々〜」など歌ネットやダウンロードでもヒットした楽曲が多くて、実に聴かせてくれます。「そばにいるね」のようなダウンロードのメガヒット時代ではありませんが、だからこそ逆に消費されてしまった感じもなく、新鮮に聞こえるものが多いですよ。よろしければどうぞ♪