前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今月は、4人組アーティストに着目した。歌詞検索上位曲のグループ編成を見ると、3人組は、FUNKY MONKEY BABYS、いきものがかり、Perfumeと上位常連がいるし、5人組は、嵐、SMAP、TOKIOといったジャニーズ勢から、KARA、休業中の東方神起などの韓国勢、さらにはアニメ内のバンド放課後ティータイムまで非常に元気。果たして、4人組はどうだろうか。

第14回:4人組アーティストTOP15 (2010年9月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位
11
100.0
妄想日記 シド 2004.12.22
2位
18
85.4
キセキ GReeeeN 2008.5.28
3位
54
38.9
マニフェスト RADWIMPS 2010.6.30
4位
55
37.2
オワリはじまり かりゆし58 2010.2.3
5位
61
35.5
HANABI Mr.Children 2008.9.3
6位
64
35.1
レイン シド 2010.6.2
7位
73
32.0
携帯電話 RADWIMPS 2010.6.30
8位
82
31.0
おしゃかしゃま RADWIMPS 2009.3.11
9位
84
30.6
Fast Forward MONKEY MAJIK 2010.7.14
10位
100
27.8
愛唄 GReeeeN 2007.5.16
11位
106
26.5
ソラニン ASIAN KUNG-FU GENERATION 2010.3.31
12位
117
24.6
お二人Summer ケツメイシ 2010.7.21
13位
126
23.3
有心論 RADWIMPS 2006.7.26
14位
145
20.9
ふたりごと RADWIMPS 2006.5.17
15位
150
20.4
夏空 Galileo Galilei 2010.6.9
次点
155
19.8
if... DA PUMP (※) 2000.9.27
※CD発売当時4人組だったので対象とした。

 ランキング表を見ると、案の定、4人組は総合TOP50にシドの「妄想日記」と、GReeeeN の「キセキ」の2曲のみでかなり少ない。しかも、2曲とも今年発売のものではない。ちなみに、TOP50中で3人組は6曲、5人組に至っては17曲(うち11曲が嵐。ちなみにソロ曲を入れるとさらにプラス5曲!)で、どちらも新曲中心。しかも、4人組の大半は、表からも分かるようにバンドのアーティスト。これは、スタンダードな編成がボーカル、ギター、ベース、ドラムとなることからも、納得できる。・・・つまり、バンドを除くと、4人組は圧倒的に少なくなるのだ。昨今活発なダンスグループでも、3人組なら三角形に、5人組なら星型にとフォーメーションがサマになるが、4人組なら四角形・・・ってちょっと変かも(笑)。

 とにかく、そんな希少な4人組で最も人気曲が多いのは、ランキングの1/3を占めるRADWIMPSで、最新曲「マニフェスト」から2006年の「ふたりごと」まで、新旧バランスよくランクイン。地上波TVに殆ど出演しない彼らの人気を歌詞の魅力が大きく支えていることが分かる。

 他には、4位のかりゆし58「オワリはじまり」は、シングル「雨のち晴れ」のカップリング(後にアルバム『めんそーれ、かりゆし』に収録)ながら、『行列のできる法律相談所』や『24時間テレビ』、『深イイ話』など、"日本テレビ総プッシュ効果"で上昇、9位のMONKEY MAJIK「Fast Forward」も7月発売のベストアルバム内の新曲だが、読売テレビのアニメ『ぬらりひょんの孫』のオープニング曲としてオンエアされて人気と、TVタイアップが大きく関係している。なお、次点のDA PUMPも、10年前の楽曲ながら、芸人によるカラオケ対決番組では定番のため、このように人気なのだ。そういえば、90年代活躍したダンスボーカルグループのSPEED、MAXも4人組。3組とも、所属事務所はヴィジョンファクトリー。しかも、メインボーカルは現在のダンスグループに多い横並びではなく、1〜2人に絞られているのが特徴。この辺の違いも、現代の行き過ぎた平等意識が影響しているのだろうか。

 以上のように、4人組ランキングは、勢いに乗って売れていない分、楽曲にチカラのあるものが多いようにも感じる。その意味では、「4人組で上位のもの」こそ、今後の注目作がより多いのかもしれない。




「キセキ」
GReeeeN

 シドのインディーズ時代、2004年に発売された1stアルバム『憐哀 -レンアイ-』収録の1曲。その第2弾「妄想日記2」が2009年のメジャー1stアルバム『hikari』で発表されたこともあり、もともと人気の高いナンバーだが、今回は8月上旬に一気に上昇した。
  原因は、音楽サイトBARKSが『酷暑を乗り切る「歌詞が怖い曲」といえば?』と、特集し、これが検索系など各ニュースサイトに転載され、さらにブログやTwitterなど口コミで大きく広がったからだと見られる。このことから、口コミ力の強さ、また歌詞検索サイトの利用頻度の高さがあらためて浮き彫りになった。
  ちなみに、「妄想日記」は、妄想癖の強い女性が、彼氏と決め込んだ男性を徹底的に追い詰める内容の歌謡ロック。4分足らずでも、ストーリー性が高くヒヤヒヤさせる歌詞が書けるのも、昭和歌謡並みに完成度が高い。また、本作をあえて発表することで、ファンに対して応援マナーを逆説的に教えているような気もして、彼らの器の大きさも感じさせる。
  それにしても、他に怖い曲でランクインしている中島みゆき「ファイト!」で、"階段で子供を突き飛ばす女性が怖い"だの、平松愛理「部屋とYシャツと私」で、"毒入りスープを夫に飲ませるのが怖い"だの、回答者は表層的に歌詞を捉えすぎ!アーティストが一番言いたいのはそこじゃないし!!(笑)

 


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は、au「LISMO!」CMソング「僕らの永遠〜何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから〜」が好評で、新人アーティスト部門で急上昇1位のWEAVERに注目。彼らは、ピアノ、ベース、ドラムというギターレス編成の3人組バンドで、2009年10月の「白昼夢」を皮切りに、続く「レイス」「トキドキセカイ」と3作の配信限定シングルをCDデビュー前にリリース(この辺は、同じレコード会社A-Sketchのflumpoolと同パターン。ちなみに、flumpoolも注目されたのは、au「LISMO!」のCMソングで、KDDIはA-Sketchの親会社だ。)
  その後、2010年2月にアルバム『Tapestry』が、累計1万枚のヒット(オリコン調べ)。初回盤が7曲入りでたった980円だったというのも、累計売上の大半が発売週に集中し(オリコン19位)、後の注目度の高さに繋がった。
  続く6月には1stシングル「Hard to say I love you〜言い出せなくて」が同じ所属事務所アミューズの看板女優・上野樹里が主演するドラマ『素直になれなくて』の主題歌に起用され、スリリングなドラマの展開と躍動的なピアノロックの相乗効果でこちらもTOP20入り累計1万枚を超え、そしてアルバム直前の「僕らの永遠〜」がauのCMに起用され一気に注目度が高まり、2ndアルバムがオリコン4位と大ブレイクに繋がった。
  こういった戦略面での話が続くと、「やっぱり大手事務所とかタイアップって大事だよな〜」などと安直に考えがちだが、彼らの場合は、その切ない歌詞と、美しいメロディー、それでいて強さも感じさせる演奏のバランスが絶妙。つまり、ポップスファンにもロックファンにも支持される音作りが最大の武器だろう。これは、音楽的振り幅の大きい亀田誠治プロデュースも大きく影響しているはず。
  人気曲第1位の「僕らの永遠〜何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから〜」は、爽やかな"草食系"ロックだが、その副題の長さや、歌詞の解釈についてネット上で、"何度生まれ変わっても、プラトニックでいいって意味?""きっとどうしても結ばれない事情があるのだろう"などと、様々な波紋を呼んだこともヒットに影響していそう。とにかく制作的にも宣伝的にも一筋縄でいかない存在。


WEAVER
 

順位 占有率 楽曲 初収録作品 発売日
1
73.6%
僕らの永遠
〜何度生まれ変わっても、
手を繋ぎたいだけの愛だから〜
2nd AL
『新世界創造記・前編』
2010.8.25
2
11.4%
Hard to say I love you
〜言い出せなくて〜
1st Sg 2010.6.2
3
3.6%
トキドキセカイ 1st AL『Tapestry』 2010.2.3
4
2.7%
白朝夢 1st AL『Tapestry』 2010.2.3
5
1.9%
2次元銀河 1st AL『Tapestry』 2010.2.3



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と熱に満ちた連載を継続中。9月8日発売のBEGINのミニアルバム『ビギンの島唄3』は、デジタル時代を皮肉った「でーじたらん」(=全然足りない)、基地問題を住民の視点で綴った「金網移民」(意味が分かった途端、泣けます!)、上京の喜びも淋しさも沖縄では倍増するんだと気づかされる「パーマ屋ゆんた」など、胸に響く歌詞がいっぱい。「最近の歌は"会いたい、会えない"ばっかりだ」と決めつけている人、ヒネくれていないで、是非こちらを応援して下さい♪