前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今月は、アニメ関連ソングに着目してみた。

第11回:アニメ関連ソングTOP10 (2010年06月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
タイアップアニメ
発売日
1位
4
100.0
GO! GO! MANIAC 放課後ティータイム けいおん!! 2010.4.28
2位
13
63.9
Listen!! 放課後ティータイム けいおん!! 2010.4.28
3位
16
60.7
レイン シド 鋼の錬金術師 2010.6.2
4位
22
47.9
バクチ・ダンサー DOES 銀魂 2010.4.21
5位
25
44.0
夏空 Galileo Galilei おおきく振りかぶって 2010.6.9
6位
65
23.7
Share The World 東方神起 ONE PIECE 2009.4.22
7位
67
23.3
ブルーバード いきものがかり NARUTO-ナルト-疾風伝 2008.7.9
8位
69
23.1
コンプリケイション ROOKiEZ is PUNK'D デュラララ!! 2010.6.2
9位
87
20.3
曇天 DOES 銀魂 2008.6.18
10位
89
20.1
創聖のアクエリオン AKINO 創聖のアクエリオン 2005.4.27
次点
105
18.4
Our MAGIC 放課後ティータイム けいおん!! 2010.4.28
※声優系の楽曲は総合TOP100にランクインしていない。

 前月の解説とも重複するが、昨今の音楽チャートでは、アニメ主題歌がTOP10入りしない週は珍しいほどで、しかもJ-POPアーティストのアニメ主題歌のみならず、アニメ内の架空のアーティストによる楽曲もランクイン、更にはアニメタイアップがなくとも上位入りする声優も登場しており、長らく減少傾向にあるパッケージ・ビジネスを大きく支えている。そのようなチャートから、ビジュアル面が支持されていることは間違いないが、では、楽曲は支持されているのだろうか。それを歌詞検索ランキングから探ろうというのが今回の目的だ。
 
  早速TOP10を見てみると、全曲TVや映画などのアニメ主題歌が並んだ。CDチャートのように、ノンタイアップの声優楽曲がランクインするほどには至っていないが、少なくとも"アニメだけでなく、その関連楽曲も支持されている"様子が見て取れる。1位、2位はともに深夜アニメ『けいおん!!』に登場する架空の女子高生バンドが演奏するオープニング&エンディング曲。顔の1/3ほどを目が占めている、いわゆる"萌え系"のキャラクターだから支持されているように誤解されがちだが、この2曲は、着うたフルでも週間TOP10入り、カラオケランキングでも超早口な「GO! GO! MANIAC」を中心に上昇中、そして本歌詞検索ランキングでも共に総合TOP20入りと、多面的にヒットしており、握手会だけでCD1週目10位→2週目100位以下となってしまうアーティスト達よりも、よっぽど"ヒット曲"らしい動きをしている。

 また、3位〜5位、7位〜9位の6曲は、いずれも所属レコード会社(あるいは事務所)がソニー・ミュージックエンタテインンメンント(SME)グループからの発売。ちなみに、平日7時台や土曜の夕方などこれらのアニメが放映されている時間枠は、原作者推薦などの特例が無い限り、すべてSMEグループのアーティスト楽曲からタイアップが決まっており、この点も同グループのアーティストが他社よりもブレイクしやすい一要因となっている。集計時点で発売前であるGalileo Galileiが5位にランクインしていることから、彼らのブレイクも濃厚だと読み取れる。但し、7位のいきものがかりは、タイアップ終了から約2年経過しているように、アニメをキッカケとしつつ、更に大衆に広がった楽曲も多数あることも忘れてはならない。

 例えば、10位の「創聖のアクエリオン」は、なんと5年以上前の作品だが、パチンコ台のBGMや数々のユーロビート・カバーでも人気を得て、今でもCD、着うた、カラオケなどで多面的にヒットし続けている。実際に、08年度の著作権使用料では、青山テルマ「そばにいるね」やGReeeeN「キセキ」と同レベルで2位となっており、いかにこの楽曲が、アニメソングを離れ幅広く支持されているかが分かるだろう。確かに、「一万年と二千年前から愛してる〜」と歌われるサビを聞けば、パチンコで一儲けしようと勇気が湧くだろうし(笑)、アゲアゲ・バージョンがドライブでかかっていれば、ついついかっ飛ばしたくなるだろう。
 このように、アニメタイアップ曲は、発売時点こそはステッカーやジャケットなどビジュアル先行のパッケージ・ヒットもあるものの、歌詞でも長く支持されているものも少なくないということが分かった。それは、やはり制作者側が、楽曲自体にチカラがあるものを目指すという原点を見失っていないからだろう。アニメ関連曲を敬遠しがちな送り手も我々受け手も、ここから学ぶことは沢山ありそうだ。




「Listen!!」
放課後ティータイム

 2007年に北海道稚内市で結成された4人組のバンド。2008年に東京FM内の人気番組『SCHOOL OF LOCK!』発のロック・フェス『閃光ライオット』第一回にてグランプリを獲得、翌年1月21日に7曲入りインディーズ・アルバム『雨のちガリレオ』を発売、殆ど番組関連の告知しかないにも関わらず、オリコン38位まで上昇した。
  そして、翌2010年2月24日に6曲入りミニアルバム『ハマナスの花』でメジャー・デビューを果たす。同作品はタイトル曲が『au「LISMO!」』CMソングに起用され、その勢いで『ミュージックステーション』にも出演、オリコン14位まで上昇した。初期レミオロメンのような地方の良さがよく分かる朴訥さ、BUMP OF CHICKEN・藤原のような良い意味でザラついた声、それでいてflumpoolのようなポップ感も兼ね備えたような魅力があり、楽曲ごとにそれらの特性のバランスが異なるため、ミニアルバムでも非常に多彩に仕上がっている。6月9日には1stシングル「夏空」を発売。野球を題材としたアニメに相応しく、青春ド真ん中の爽快感あふれるミディアム・ロック。夏の高校野球シーズンにも突入し、ロングヒットとなりそうだ。



ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は3位に初登場したナオト・インティライミに注目。"太陽の祭"="インティライミ"と称する彼は、1979年三重県生まれの千葉育ち。2001年〜2002年にかけて「なおと」名義で一度デビューするも、まったくチャートインせず、契約解除。その後、2003年〜2004年に世界28カ国を旅し、以降現在のアーティスト名で活動、2005年からのインディーズ活動を経て、2010年4月7日シングル「カーニバる?」で再度メジャー・デビューを果たした。

  この頃から、長旅の過程で"アラファト議長の前で歌った男"として情報番組などで話題を呼んでいたが、続く5月19日発売の2ndシングル「タカラモノ〜この声がなくなるまで〜」では上戸彩出演の『AOKI』CMソングとして起用されたことや、また人気モデル武智志穂がPVやジャケット写真に出ていることも話題となり、高音が切なくも全体に躍動的な歌声も相まって、CDで週間TOP20入り、着うたでも週間TOP10入りを果たした。1stシングルの2曲は、まるでサッカーのサポーターズ・ソングになりそうなほど熱いナンバーなので、7月7日発売の1stアルバム時でこちらも再度注目を浴びそうだ。


ナオト・インティライミ
順位
占有率
曲名
初収録作品
発売日
1
88.7%
タカラモノ〜この声がなくなるまで〜 2ndシングル 2010.5.19
2
5.2%
カーニバる? 1stシングル 2010.4.7
3
3.8%
この手の中に 2ndシングルc/w 2010.5.19
4
2.3%
風になれ 1stシングルc/w 2010.4.7
         
 



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と熱に満ちた連載を継続中。毎年2,5,8,11月は印税という名のお小遣いをいただく度に、ネットでマニアの方が「はよ発売せんかい!ゴルァ〜!」みたいに言っているCDが売上300枚程度なのに対し、誰にも批評されない企画CDが3万枚以上売れるという事実に直面します。つくづく"サイレント・マジョリティー"のご意見って大切ですね・・・。