前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。
今月は、毎年この季節に話題となる桜ソングと卒業ソングに注目した。
第9回:桜&卒業ソング・ランキング (2010年04月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
種別
1位
1
100.0
Best Friend 西野カナ 2010.2.24 卒業
2位
4
44.5
サクラサク 北乃きい 2010.2.24
3位
5
43.7
YELL いきものがかり 2009.9.23 卒業
4位
23
18.2
3月9日 レミオロメン 2004.3.9 卒業
5位
29
15.1
FUNKY MONKEY BABYS 2009.2.18
6位
36
13.9
桜の栞 AKB48 2010.2.17
7位
42
12.8
桜会(さくらえ) ゆず 2010.2.3
8位
43
12.8
ガチ桜 湘南乃風 2010.2.10
9位
47
12.2
桜雨 JUJU 2010.2.24
10位
48
11.9
サクラ咲ケ 2005.3.23
11位
50
11.7
EXILE 2007.2.14 卒業
12位
53
11.1
清水翔太 2010.3.3
13位
58
10.3
手紙 〜拝啓 十五の君へ〜 アンジェラ・アキ 2008.9.17 卒業
14位
64
9.9
Best Friend Kiroro 2001.6.6 卒業
15位
91
7.8
Lovin' Life FUNKY MONKEY BABYS 2007.1.24
※卒業や桜をテーマにしたもの及び「卒業式」でよく歌われる楽曲を対象とした。

 1位は西野カナの「Best Friend」。女の子同士の友情を歌ったもので、必ずしも"卒業ソング"ではないが、春めいたCDジャケット、2月というCD発売タイミングなど、明らかにこの時期を意識しているだろう。その戦略が奏功して、CD、着うた共に自己最高売上となりそうだ。
 2位は、北乃きいのデビュー曲で、こちらは直球の桜ソング。受験ソングとしてのW効果もあって、今季の桜ソングとして目下のところトップだ。3位は、いきものがかりの「YELL」。昨年9月から、NHK「みんなのうた」&「全国学校音楽コンクール」課題曲として人気、その後、NHK紅白歌合戦での歌唱で更に広がり、ここへ来て卒業ソングとして更に注目されている。上記の流れは2008年〜2009年にアンジェラ・アキ「手紙」(今回13位)でも見られた現象で、2010年もこのNHK効果が期待できそうだ。

 また、参考までに、着うたフルの月間ランキング(レコチョク調べ、3月度)で、桜&卒業ソングTOP5を見たところ、①「Best Friend」(西野カナ)②「サクラサク」(北乃きい)③「さくら」(ケツメイシ)④「YELL」(いきものがかり)⑤「3月9日」(レミオロメン)と5曲中4曲が歌詞検索の人気と同調しており、いかに両者の相性が良いかが分かる。(なお、ケツメイシ「さくら」は、今年3月に初めてフル音源の配信が解禁されたこともあり、大きく配信数を伸ばした。)
 他方、着うたもそこそこに強いが、それ以上に歌詞検索で強いのがFUNKY MONKEY BABYSだ。彼らは5位の「桜」、15位の「Lovin' Life」、17位の「旅立ち」と3曲がTOP20にランクイン。彼らの熱いメッセージ性が、感情の高揚感とマッチしているのだろう。それにしても3人の平均年齢は約30才というのに、青くさい楽曲を送り続け、そしてそれが高く支持され続けているというのは凄いことだ。ある意味、"ポスト・サザン"に最も近い位置なのかもしれない。

 その他、全体を見てみると、4位のレミオロメン「3月9日」、10位の嵐「サクラ咲ケ」、14位のKiroro「Best Friend」と、5年以上前の楽曲もランクイン。これらは、ケツメイシ「さくら」やコブクロの「」、福山雅治「桜坂」に比べれば、決してCDや着うたの売上げも多くはない。ただし、後者の有名どころは、既に歌詞を憶えている人も多そうだ。(それでも着うたが伸びているということは、既にCDで知っていても、過去を懐かしんで着うたで購入する人が多いのだろう。)これに対し、前者の3曲は、新たに歌詞を気にする若いファンが多いと推測できる。その意味で、古い楽曲でも、何らかのキッカケで歌詞が脚光を浴びれば、そこから新たな名曲が生まれうるということが分かる。
 以上、様々な桜&卒業ソングの名曲を見てみたが、TOP15内でここ1年での新人は北乃きいのみで、彼女も人気女優としての知名度が先行したヒットであり、この路線は、意外と実力者しか通れない"狭き門"であることも分かる。音楽関係者の皆様には、安易に(?)桜や卒業に頼ることなく、じっくりと新人を育てていただきたい。




「サクラサク」
北乃きい

 2010年2月24日に発売された12thシングル収録曲。過去と決別したくて桜の咲く川べりを独りで歩く女性が主人公というバラード。
  流れるような繊細なメロディーと、時間の流れを感じさせる物語性のある歌詞は、EXILE「Ti Amo」や「ふたつの唇」同様に、作詞:松尾潔×作曲:中村仁という名コンビで、適度に湿り気があるのにジメジメしておらず、お洒落なのにベタな感情も取り入れているという、いつもながら絶妙な塩梅。勿論、切なさ極まる高音なのに決して聞き苦しくないというJUJUの歌声の魅力も大きいだろう。同作は、3月17日に発売された3rdアルバム『JUJU』にも収録。
  アルバムでは、更に彼女の何でも歌いこなすというボーカル力の凄さが実感できる。


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  6ヶ月連続Hilcrhymeが1位となるなか、今月は4位のmiwaが上昇中。彼女は1990年神奈川県生まれ東京育ちで、現在慶應義塾大学に通う19才、2010年3月3日にシングル「don't cry anymore」でデビューした。
  近年は、作詞だけを担当する女性アーティストが多い中、彼女の場合はアコギをかき鳴らして作詞・作曲も手がけている。デビュー曲は、ドラマ『泣かないと決めた日』の主題歌に起用されたこともあって、葛藤しながら夢を追い続ける女性を細い声ながら力強く歌っているのが印象的。他方、シングルのカップリング曲「めぐろ川」はミディアム調の切ない桜ソング、高校1年生の時に作ったという「Wake Up,Break Out!」は恋に一途な女の子の気持ちを歌ったポップチューンで、デビュー曲だけでは分からない多才さを感じる。その点で、 "女・尾崎豊"と言われたYUIとはかなり異なり、むしろ90年代にミリオンヒットした川本真琴が近いかも。
  今後、彼女の個性が色濃く出てくることを大いに期待したい。
 
※miwaは、「don't cry anymore」のみが上位ランクイン


miwa




つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛情と熱情に満ちた(?)連載を継続中。先日、音事協magazineという業界向けフリーペーパーで2ページのインタビューを受けました。関東地方の図書館や劇場でも配布されていますので、"音楽マニアへの道"が気になる方(?)は是非どうぞ。