ルーツは天道よしみさんとか美空ひばりさんの曲。

―― 13曲目にはコブクロ「ここにしか咲かない花」のカバーが収録されておりますが、これは思い出の1曲なのでしょうか。

自分の原点というか、素直な心の答え合わせの歌というか、そういうタイプの告白ソングですね。路上ライブをずっとやっていた時期があって、この曲はもうそのときから歌わせていただいてました。私は田舎から上京して、音楽の道へ進んだわけですけど、下積みも長かったんですよね。それで“東京に出てきたこと”とか“自分が歌うこと”の原点に立ち返りたくて、実家に帰ると、いつも初心を思い出させてもらえたんです。だから<あの優しかった場所>が今でもあるから、頑張り続けることができるという想いにすごく共感しますね。

―― ericaさんが歌詞で影響を受けたアーティストというと、どなたですか?

私は、両親が仕事で忙しくてほとんど家にいなかったので、おじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらっていたんですね。学校の送り迎えとか、お弁当とか。そして、車のなかではいつも演歌が流れていました。その世界観には大きく影響を受けていると思います。だからルーツは天道よしみさんとか美空ひばりさんの曲なんですよ。自分がわかりやすいシンプルな言葉をチョイスするというのも、きっと演歌に通じていて。

あと「川の流れのように」とかって、いろんなアーティストさんがカバーしていますけど、歌う人によって全く印象が違うんですよね。そういう“声という楽器で言葉を伝える”という力も演歌で知りました。そしてその歌声と言葉による力は、シンプルであればあるほど発揮されると思います。「愛してる」とか「好き」って誰でも使う言葉だからこそ、私の音で「愛してる」を伝えることで「愛してる」以上の想いを伝えられたらいいなって。

―― ルーツが演歌とは意外でしたが、理由を訊くとすごく腑に落ちました。

演歌でないところだと、小田和正さんの「言葉にできない」とか、まさに私が目指している世界観だなぁと思います。<あなたに会えて ほんとうによかった>ってありきたりな言葉なのに、小田さんが歌うことで、こんなに涙が溢れるんだって。音で言葉を表現し尽くしている方ですよね。それはコブクロさんのライブでも感じました。

―― ご自身が歌詞を書くときに一番大切にしていることも、言葉のシンプルさとどう“音”で伝えられるかというところでしょうか。

そうですね。だからスランプのときにも「同じフレーズを使ってもいいから、歌声で想いを使い分けよう」って思えたのかも。あとは、あまりチョイスしすぎないことも大切にしていますね。溢れてくるものをそのまま歌詞にする。だから曲作りもすごく速いんです。ちょっと寝かすとか、あまりしないですね。

―― ericaさんがこれからこういう歌詞に挑戦してみたいな、という世界観はありますか?

実は今回のアルバムで、やってみたかった歌詞にかなり挑戦させてもらったんですよ。これまで結構たくさんアルバムを作ってきましたけど、それは配信になっている曲をパッケージにしたりとか、YouTubeに上がっている曲を録り直したりとか、すでにリリースされているものを収録したものであることが多くて。私としては“ベストアルバム”的な感覚だったんですね。だけど今回、初めてアルバムのためだけに新曲を書き下ろすということができまして。

―― たしかにほとんどが新曲ですね!

photo_01です。

本当は2枚組にしたいくらいたくさんできたんですけど、そぎ落として16曲を詰め込みました(笑)。私は今までシングルばかりリリースしてきたから、たとえば「口紅」とか「紅茶」なんてタイトルの曲は作れなかったんですよ。サビは何秒で、頭はキャッチーで、タイトルもわかりやすく、とそういうことを考えがちだったんですけど、アルバム曲なら良い意味で“休憩できる曲”があってもいいじゃん!って。そうしたら作りながら「こんなに楽しいんだ!」って思いましたね。もう「赤ずきん」とか好き放題。赤ずきんをテーマに作るとか、やっぱりなかなかシングルでは出来ないですから。

どうしてそんな 耳が大きいの?
それは君の声 聞く為さ
どうしてそんな 目が大きいの?
それは君を 見つめる為さ
どうしてそんな 口が大きいの?
赤ずきん

―― この曲を聴いて童話「赤ずきん」のセリフって、実はエロティックにも捉えられるんだなって思いました(笑)。

これ、終電で好きなひとに会いに行くんですよね。なんか今までは、とことんピュアでまっすぐで健気な女の子ばっかり描いてきたけれど、そういう子だってときにはこういうことを思うよ!ってことを歌いたかったんです。

―― 10曲目「慕情の涙」もこれまでのericaさんの楽曲にはない世界観ですよね。

ですね。これはまさに私のルーツである演歌が反映されていますよね。仮歌のときはもっとこぶしが利いていたんですけど、ちょっと抑え気味に歌いまして。今回は私の土台である演歌を取り入れてみました。これからもアルバム曲でもっともっといろんな歌詞に挑戦してみたいですね。

―― ありがとうございました!では、最後に今のericaさんの夢を教えてください。

私はYouTubeとかTwitterとかSNSがきっかけで、みなさんに知ってもらえて、すごく嬉しいし、カラオケでericaの楽曲も沢山歌ってもらっています。これからは、歌だけでなく、歌の先にある私のことも、もっと知ってもらいたいです。そしてライブにもお待ちしています!


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