31曲分の歌声&物語&感情を味わえる“美味しい”ベストアルバム!

 デビュー15周年の“大塚 愛”が、ALL TIME BEST ALBUM『愛 am BEST, too』をリリース!今作には誰もが知っている歴代人気曲はもちろん。彼女が「人生には恋愛以外の楽しさがこんなにいっぱいあるんだ!」という想いでセレクトした名曲までぎっしり収録されております。取材の冒頭から「転職しようかな…」なんて衝撃発言もございますが、自身の歌声にも歌詞の表記にも説得力にもとことんこだわってきた音楽愛はしっかりみなさまに伝わるはず…!今作を聴く前に是非、ご熟読を!

(取材・文 / 井出美緒)
作詞・作曲:aio 空が開ける 光はある 私の今 自由になる 幸せはある 私を生きて 私は今、 私は今。 もっと歌詞を見る
なんて私はヘタクソなんだ! 辞めちまえ!

―― 愛さんはドラマ愛好家で、今期(2018年10月期)では高橋一生さん主演の『僕らは奇跡でできている』のツイートをよくなさっていましたよね。個人的には劇中で、次のセリフが印象的だったのですが、愛さんは「やりたい」はずの音楽を「やらなきゃ」と思うようになっていたときはありますか?

“「やりたいならやればいい」
「やらなきゃって思うならやめればいい」”
(ドラマ『僕らは奇跡でできている』より引用)

それが…最近、気づいたんですけど、そもそも私は音楽を「やりたい」からやっているんじゃないかもしれない。もちろん若い頃は「これしかない!」ってつもりでやっていたんですけど、改めて考えてみるとその理由は「歌うことが好きで、どうしたってこの仕事じゃなきゃ嫌だったから」ではないんですよ。やっぱり職業なので気持ち的にはいつも「やらなきゃ」ですし(笑)。

―― そうなんですか!?では、音楽をはじめた動機は何だったのでしょうか。

これしかできなかったから、ですね。毎日ちゃんと会社に行ったり、周りに気を遣ったり、事務的な処理をしたり、多分できない。そうやってできないことを消去していったら、音楽しかなかったというのが本当の理由なのかもしれないんです。今になって「あ、だから私は普段、音楽を聴かないんだ」って気づきまして。その上で、じゃあ自分が好きなもの、「やりたい」ことって何だろうって考えてみると“洋服”なんですよね。だから…転職かなぁ?

―― 転職…。今日は「15年間の活動のなかで辞めたいと思ったことはありますか?」という質問も考えていたのですが…。

私が先に答えちゃいましたね(笑)。まぁ辞めたいというより、自分のレベルがプロの世界にあまりに届いていない苦しさ、情けなさから来る逃げなんですけど。「やりたい」なら音楽より洋服だなって思っちゃう。なんか…これだけ時間があったのに、どうしてこんなに成長が遅いんだろう?という気持ちがすごく強いですね。

―― でも、歌ネットの歌詞アクセスを見ると、愛さんの楽曲はずーっと愛され続けてきていることがわかります。

いやいや、多分「何を歌ってるんだか聴き取れねえよ!」ってことで検索されているんだと思います(笑)。よく娘も私の曲を歌っているんですけど、大体は歌詞を間違えているんですよ。それって「歌詞わかんねえよママ!」ってメッセージなのかなって(笑)。

―― …(笑)。取材前に、愛さんのいろんなインタビューを拝読してきたのですが、愛さんは基本的にご自身に対してめちゃくちゃ批判的、シビア、ストイックですよね?

…(笑)。客観的に判断したとき、自分で「これ良いじゃん!」って感じたときには、素直に褒めるんですよ。「天才だな!」って思える瞬間もあるんです。できればそういう瞬間で埋めたい。だけど、ほぼ常に「才能ないな」って思っています。毎回レコーディングとかライブのたびに、自分の歌をチェックするじゃないですか。もう…「なんて私はヘタクソなんだ! 辞めちまえ!」みたいな。映画監督のような叱咤を飛ばしています。

―― 先日のFNS歌謡祭の生歌だって素晴らしかったですよ! ちなみに番組後はエゴサーチはなさるのでしょうか。

あ~FNSも怖すぎて観てないなぁ。エゴサはしません。何があろうと(笑)。昔、HPにコメント欄みたいなものがあったんですよ。で、デビュー当時ってどんな意見が寄せられるかなんて全くわからないから「みんな聴いてくれたかな~!」って一人で盛り上がっちゃって、ワクワクしながら読んで…痛い目に遭いました。検索しなくたって「なんだこのヘタクソな歌は!」とかいっぱい聞こえてきましたし。ただ、もうヘタクソなのはどうしようもないので、意識をしてなんとかプラスに変えるようにしていますね。

―― 先ほど、娘さんのお話もされていましたが、お子さんが産まれてから“歌詞面”で「好き」とか「愛」の捉え方、描き方で変わったと思うところはありますか?

photo_01です。

う~ん。娘が産まれるより随分と前に「」という曲を書いたんですけど、その歌詞は「あれ?私この時期にもう子どもがいたのかな?」って思うくらいの内容なんですよ(笑)。そう考えると変わってないのかなぁ。こう…娘に会うことを目標にそれまで活動してきたというか、ずっと自分のなかに一緒にいたような感覚。ああいう“愛”が書けていたのは不思議な部分もあります。でも「さくらんぼ」とか「CHU-LIP」とか若いテイストだと…。今もまぁ書けるとは思うんですけど…。

―― ご自身が歌うとなると違う…という感じでしょうか。

そうですねぇ。たとえば楽曲提供とかで若い子が歌ってくれる分には嬉しいんですけど…こんな36歳がってなると…しんどいなぁ…(小声)。何より、歌うことってやっぱり気持ちが大事ですから。自分が思ってもいないことを歌うと、説得力のないつまらない曲になって、届くものも届かない気がします。

―― ライブなどでご自身の初期のアッパーなラブソングを歌うときはいかがですか?

今年の『LOVE IS BORN ~15th Anniversary 2018~』で、まさに「あ、今歌うのはもうしんどいかも」っていう曲が多々ありました。その違和感をどう誤魔化すかと考えたら…ふざけるしかなかったですね(笑)。フレッシュで若い危うさや勢いみたいなものって、もう落ち着いた自分では出せない域なので、それを別の視点から捉えたり、伝えたりしていくことが、これからの課題ですかね。

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