相当、嬉しかったです。1位が「ホワイトビーチ」だったこと。

―― お二人のお話を聞いていると、歌詞面でもとても信頼し合っているのがわかります。

新里 なんか嬉しいですね。イズの歌詞はね、難しいことは書いてないんですけど、ひとつひとつの言葉が頭の中でパッと映像になるんですよね。だから自分がその世界に入りやすい。同じ気持ちでハッピーになったり、泣いたり、強く感情移入できる。僕もただ歌うだけじゃなく、自分の体験のように歌い切ることができる。そういう力がすごいと思います。とくに最新曲の「Island」という歌は今、歌っていて気持ちが良いですね。イズの大きな愛、優しさ、そして「沖縄が好き」「仲間が好き」っていう素直な気持ちがそこに表れていて。この歌はみんな一緒に口ずさみたくなるんじゃないかなって思います。あと俊(Dr)の歌詞もすごいですよ!

photo_01です。

仲宗根 うんうん!私とヒデって、基本的にバカなんですよ(笑)。表現の仕方はそれぞれ違うから味は出るんですけど、どちらも言葉の引き出しは少なくて、誰もがわかるような言葉でしか表現できない。でも俊は結構「この英語は何!?」「この難しい日本語は何!?」みたいな歌詞も持ってきますね。頭の良い歌だし、それでいて等身大の書き方も上手いんです。彼は本が好きで、いろいろ読んだりしているんですけど、きっと常に歌のことを考えながら向き合っているんだと思います。趣味にしても何にしても、それをすべて音楽に反映させて活かせているというところが、俊はすごい。

それに、メンバーの誰より早く曲を持ってくるのが俊ですね。私たちも曲を作るから、産みの苦しみはよくわかる。だけど俊は「苦しい苦しい」って言いながら、「もう曲ないよ。俺書けないよ」って言いながら、一番曲を持ってくる率が高い(笑)。あと私もヒデも「これは得意だけど、これはちょっと苦手」って分野があるんですよ。でも俊はどんなジャンルの曲も均等に作ることができる唯一の人なんじゃないかな。そして、その歌にはちゃんと深い愛情もある。バラードでもポップでもロックでも一番、多才に描けるのが俊じゃないかなって思います。

ファンクラブ投票順位
1 ホワイトビーチ
2 AM11:00
3 Song for
4 モノクロ
5 NAO
6 canvas
7 さあ行こう
8 隆福丸
9 あなた
10 時をこえ
11 未来
12 Ocean
13 帰る場所
14 旅立ち
15 366日

―― では、ここからは最新作についてお伺いしていきます。まずセルフカバーベスト『STORY~HY BEST~』の楽曲選定にあたり、ファンクラブなどで楽曲投票を行ったんですよね。1位は「ホワイトビーチ」でしたが、集計結果を見ていかがでした?

新里 相当、嬉しかったです。1位が「ホワイトビーチ」だったこと。僕は大満足でしたね。もし「AM11:00」が1位だったら、それは俊が描いた恋愛の世界でのHYじゃないですか。でもこの歌はHYが高校卒業するときに、僕たちの思い出を残したくてレコーディングした最初の曲なんです。ここをきっかけにHYが始まった。しかもこの歌は、同じ風景を見ていた5人のナチュラルでピュアな気持ちがそのまま表れているんですよね。だから“HYといえば「ホワイトビーチ」だ”ってみんなが選んでくれて、とっても嬉しかったです。

―― この歌は<乾いた風がもうすぐ 冬の合図を出してる>というフレーズで始まります。HYさんの冬ソングって珍しい気がしますね。

仲宗根 でも、一番最初に作った曲だから“冬だけど夏のイメージもある”みたいな、自分たちでもわけわからない歌詞になっているんですよ(笑)。たしかこれを作っていたとき、冬だったんだっけ? 寒かったから冬の歌を書くことにしたんだろうね。

新里 うん。悠平と信介と俊が「ちょっと商店でアイスでも買ってくる」ってフラッと出かけて、イズと二人きりになって。そのとき、とくに曲を書こうという話をするわけでもなく、本当に自然な流れで「いいじゃんこのコード」「おぉいいねぇ」「じゃあこのまま作ってみる?」って喋りながら出来ていった。30分~1時間くらいで、もう骨組みが固まっていたと思う。

仲宗根 ただただ楽しくて作っていったから、音楽に関しての固定観念もまったくなくて。「これとこれを合わせたら不協和音になる」とか「冬というテーマだから、冬をイメージした歌詞を書く」とか。だから最近、俊に言われて気付いたんですけど、私とヒデは冬のことを歌っていたはずなのに、俊のラップが入ってくると何故か急に夏の話になるんですよね(笑)。それなのに今まで違和感がなかったくらい、本当に“音楽が好き”って気持ちだけで書き上げた曲だという印象が強い、特別な歌なんです。何年経っても。

新里 うん、ずっと色あせない。ライブでも。ちなみにこの「ホワイトビーチ」というタイトルは、沖縄のうるま市にある軍の基地の名前なんですよ。その名前が有名だから、なんとなく「ホワイトビーチ」でいいんじゃない?ってノリでつけて。

仲宗根 そうしたら最初の頃、インタビューの方がいろいろ詮索してくださって、沖縄のもっと深い根深い歴史の話をされたこともあったんですけど、私たち全然そんなこと考えてなかったんだよね(笑)。本当に「ホワイトビーチ」は何もかもが、単純な思いつきと音楽を作る楽しさの勢いで出来上がっているんです。

―― 月日を経て、今のご自身がセルフカバーをしてみて、歌詞の捉え方が大きく変わった曲はありましたか?

photo_01です。

新里 僕は「AM11:00」ですね。この歌の作詞をした俊は、ませているというか、素敵な恋愛の世界を描く力が昔からすごかったんです。その一方で僕は「AM11:00」をリリースした当時、自分の恋愛のイメージがこの歌詞に追いついていなくて、本当の意味ではちゃんと歌えてなかったのかもしれない。でも今は<「目を覚ましてよ」君の声が 僕を包み込み>ていう冒頭から想像しながら歌うことができたんです。だから改めて「AM11:00」を、新鮮な感覚で自分の中に取り入れられた気がして、気持ちがよかったですね。

仲宗根 私は「NAO」かなぁ。この歌は親友のナオコのことを書いているんですけど、彼女は当時、女の人を弄ぶような悪い男の人が好きで。みんなが「やめたほうがいい」って言っても、その男は突き放すこともしないし、彼女も離れられなくて、結局ずっとそばにい続けたんですよ。でも、それから月日を経て、ナオコは今、全く違う人と結婚して、子どももいて、無事に幸せになっているんですね。

そんなナオコを知っているから、新たに「NAO」を歌いながらまず「幸せになってよかったねぇ…」って思いました。でも、この歌を初めて聴く若い世代の子たちにも、絶対ツライ恋愛ってあるじゃないですか。だから「そんな男性に絶対、裏切られるなよ!」って気持ちもありつつ。とはいえ「悪い人ってわかっていても、恋をしたら好きって思いは止まらないんだよね。そのあなたの気持ちを私も知っているよ」って包み込むような気持ちもありつつ。そういういろんな気持ちで今回は歌わせてもらいました。

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