INTERVIEW
「こんなにいろんな“好き”があるのに“好き”って言葉しかない」

ここからはニューシングル「TONIGHT」についてお伺いしていきたいと思います。タイトル曲は、聴いているだけで心地イイ、夏の夜のラブソングですね。

Yu:僕らの夏の代表曲に「WE ARE YOUNG」というものがあるんですけど、それはかなりアップテンポで盛り上がる曲なんです。今回は2作目のサマーソングとして、また違ったテイストの曲ができたらいいなと思って作曲をしました。そうしたらわりと切ないメロディーが出来上がったので、それを言葉にも置き換えたくて。楽しい夏なんだけど「あぁもうこんなに時間が過ぎてしまったのか」とか「まだ終わってほしくないな」という気持ちを歌詞に込めました。あと、昔を思い出して「あんな胸キュンな夏があったな…」って懐かしさを感じてもらえたりしたら嬉しいですね。

<なんだか楽しいけど切ない季節だ>というフレーズがありますが、Yuさんにとっての夏って他にどんなイメージが浮かびますか?

Yu:行動が活発になる季節ですね!夏って女性の露出度とかも上がるじゃないですか(笑)。だから人間は本能的に活発になるらしいんですよ。僕はとくに夏の真昼より、夜にテンションがあがります。ちなみに冬は、外で雪が降っているなか、部屋で恋人とふたり布団にくるまって映画を観る…とかそういうのが理想です(笑)。でも夏は彼女と過ごすというより、友だちとワイワイ騒ぎたいタイプかなぁ。

そして2曲目の「LIFE」は“躍らせる”というより“聴かせる”楽曲ですね。

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Yu:そうですねぇ、すごく壮大なトラックが出来てしまったので、どういう歌詞を乗せていいのか最初は迷いました。「TONIGHT」は僕らの楽曲スタイルである「一緒に楽しもう!一緒に踊ろう!」というメッセージが根本にあるんですけど、「LIFE」はそれが通用しない楽曲だったから。でも僕が日常で考えていることって、実はこういう“生と死”についての哲学が多いんです。最も興味のあるものは“宇宙”ですし(笑)。今までは、気持ちよくノレる曲で重いことを歌っても…と思ってあえて書いていなかったんですけど、「LIFE」には自然とこういう言葉を引き出してもらいましたね。“希望”を持てるような楽曲になったかなぁと思います。

<この道には思うより高くて挫けそうな壁もある でも先には思うより素敵な場所があるはずだから>というフレーズがとくに希望的だと感じました。ちなみに、アイドラさんにとっても活動していく中で“壁”のようなものってありましたか?

Yu:う〜ん、あんまりバンドとしての逆境というものはないけど…個人としてはあります。僕、大学生の時に起業をしていて“プロダクトプロデュース”というものをしていたんです。デザインのディレクションをしたりとか、ブランド同士のコラボレーションをしたりとか。一方でバンドのマネージャーもやっていたので、もともとは裏方の仕事がベースだったんですよね。でも、自分が音楽をやるとなった時に、何もかも中途半端にやり続けるのは嫌だなって、全て辞めてバンド一本に絞るという決断をしたんです。結構そのとき責任ある仕事もやっていたので、自分の中ですごくツライ決断でしたし、高い壁でしたね。ただ、そういう壁があったからこそ今があるので、「LIFE」の歌詞はまさにその自分の中の経験を思いながら書きました。

なるほど…。「LIFE」の歌詞には、よりYUさんご自身の思想や経験が反映されているんですね。また、ひとつ気づいたのですが「LIFE」の中にも“tonight”という言葉が登場しますね。

Yu:ヤバイ、気づいてしまいましたか(笑)。実は自分の中で「TONIGHT」と「LIFE」って繋がっているんです。まず「TONIGHT」は、正確に言うと夜そのものではなくて「これから夜だ!」という夕方のシチュエーションを描いているんです。そして、その夜が「LIFE」で出てくる“tonight”なんです。あと「TONIGHT」の中で<We're gonna find forever Love>っていう英語詞があるんですけど、「LIFE」には<I found this love baby><Let's see together tonight>というフレーズがあるんです。つまり「TONIGHT」で“これから見つける”と歌っていた愛を「LIFE」では見つけたんですよ。

そうだったんですね…!すごく腑に落ちました。あと“あなた”という言葉も「TONIGHT」「LIFE」そして「SING(electric version)」(※1stアルバム「TOKYO」収録曲)すべてに綴られていますが、3曲とも表記の仕方が違いますね。

Yu:そうなんですよ。これは雰囲気なんですけど、「TONIGHT」は曲が明るくてアップテンポなので、漢字での<貴方>が耐えうるというか、逆にロマンチックだと思ったんです。でも「LIFE」はどちらかというと曲が壮大でお堅いじゃないですか。だからここで漢字の<貴方>だと重すぎるかなぁと。聴きながら歌詞を読んでもらったときにスッと入ってくる表記にしたくて<あなた>とひらがなにしたんです。そういう表記の仕方をすごく考えながら言葉を選んでますね。

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たしかに、ところどころ「オトナ」や「ヒト」とカタカナを使用していたり、アイドラさんの楽曲は歌詞を読んでいて、とても文字の並びが気持ちイイなぁと感じました。

Yu:あ〜それに気づいてもらえるのは嬉しいです!かなりうるさくこだわっているので。歌詞を活字として読んだときのことを考えるのが好きなんですよねぇ。文字の並びが綺麗じゃないと僕の美的センスにそぐわないんです(笑)。

3曲目の「SING(electric version)」には<何億とある細胞すべてが アナタを愛してしまうから>という素敵なフレーズも登場しますが、YUさんはどんな恋愛が理想ですか?

Yu:僕は自分がラブソングを書くとき、いつも“理想の恋愛”をしているテイで書いているんですよ。その想像と実体験を結びつけたりとか。だから理想は、「SING」で歌っているようにおじいちゃんおばあちゃんになってもラブラブでいることかなぁ。なんか今の僕の年で、女の子くどいてロマンチックなこと言ってもなんか…違うなぁって。それこそ性欲がなくなっても一緒にいたいと思えることが究極のロマンチックだなぁと思います。

今年はやたらと不倫のニュースが多いので、一層そういう恋愛に憧れてしまいます(笑)。

Yu:うん(笑)。でも男ってバカだから「好き」って恋愛感情と性欲ってあんまり区別できないんですよね。すごく好きだなぁと思って、仲良くなって、まぁその…そういう感じになって、一晩を共に過ごしたら「あれ?やっぱりなんか違ったわ」とか。その時になって「あの“好き”だと思っていたものって性欲だったのか」と気づくようなことってあるんだと思います。だから本当…すいません(笑)。ただ、最近よく考えるんですけど、なんでこんなにいろんな“好き”があるのに“好き”って言葉しかないんですかねぇ。次の曲あたりでそういうことを歌詞にしようかな(笑)。



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