りんご

バスの窓越しに過ぎてゆく
まだ葉をつけていない 早生のりんご
雪を積もらせた細い枝は
空へ 繋がってゆくのでしょう?

あなたのことを思い描く
笑い声や しわや瞳の奥を
ひとつひとつ 思い出の箱を
静かに開けてみる
またひとつ

朝日を浴びる透明なしずく
水溜まりに 小舟が浮かぶ
風が騒いで波紋は広がる
海へ 繋がってゆくのでしょう?

あなたのことを思い描く
やさしい仕草 確かな歩き方も
ひとつひとつ 思い出の箱を
静かに重ねてゆく

今 この瞬間にも 季節は変わり 過ぎてゆく
春と夏へ 秋と冬へ 過ぎてゆく
どこまでも進んでゆける

あなたのことを思い描く
胸の中のあたたかな記憶
移り変わり それでも憶えてる
ほらね またひとつ またひとつ...

枝から枝へと手を結んで
白い花を咲かせて いつの日か
大きなりんごを実らせる
ゆっくりと走る 窓越しに見える
あなたを見つけた
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