新無法松の一生

啖呵切るより 手のほうが早い
無法松よと なじらば なじれ
小倉祇園の どまぐれ酒に
募る思いを呑みくだしゃ
男涙に 男涙に 血が混じる

「ぼんぼん なしてな なしてぼんぼんに ぼんぼんちゅうたら いけんとな
なしてぼんぼんに 吉岡君とか吉岡殿って 云わにゃいけんとな
おいさんはのぉ ぼんぼんがこげゃん小まかぁとっから 育てちきたっとぞ
そりゃぁ確かに ぼんぼんは大きゅうなった
ばってん幾つになっても おいさんからみたら ぼんぼんは やっぱり
ぼんぼんばい」
響灘から 吹く風に
度胸 もろ肌 さらしつつ
口に含んだ 柄杓酒
パっと 両手に吹きかけて
ドっと打ち出す 撥捌き
暴れ打ちから 勇み駒 恋も未練も噛み殺し
腕も折れよと 打ちならしゃ さすが富島松五郎と
小倉雀も聴き惚れる 男四十路の命歌

「生まれて初めて 恋っちゅうもんばした
相手が 人の奥さん これだけはどげんもならん ばってんおいは泣かんぞ
落ちる涙を 瞼でこらえ 玄界灘を睨みつけ 叩く太鼓の撥捌き
ぼっちゃん 男っちゅうもんは一生にいっぺん 泣きゃぁ よかつばい
そいよりも 見ときなせい 松五郎一世一代
これが小倉の乱れ打ちですばい」

修羅場 渡世の 荒くれもんが
惚れた腫れたと 云うてはすまぬ
夏がゆくゆく 神嶽川に
投げて弔う 夢ひとつ
これが男ぞ これが男ぞ 無法松
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