鯨の浜唄

海で男が死んだときいて
浜の女が 大酒喰らい
亭主返せと 管(くだ)巻(ま)いた
おーい おーい 沖の鯨よ 潮吹く前に
後家(ごけ)の涙を 拭いてやれ

他所(よそ)で生まれて流れて五年
ここは紀の国 旅路の果ての
紅い明かりの 点る巷(まち)
おーい おーい 沖の鯨よ 樽酒もって
夜伽しに来い 泣きに来い

出逢い頭(がしら)の相(あい)惚(ぼ)れだから
暮れに祝言 俄かに挙げて
たった三月で 児が出来た
おーい おーい 沖の鯨よ 浜唄なんぞ
十八番(おはこ)ひと節 歌いなよ
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