初恋草

街の 忙(せわ)しい 暮らしの中で
いつしか失くした 自分がある

街を 離れて 緑の中を
一人山道を 歩いてみた

涼風(すずかぜ)に 誘(いざな)われ
道端に ふと目をやれば
密やかに 恥じらい見せ
揺れて匂う 初恋草

初々しさ 瑞々しさ
躊躇(ためら)いつつ つい手折って 胸に抱く

街に 戻った 心の中に
初恋の頃の 自分を見る
ひたむきに 穢(けが)れなく

愛したい あの日のように
翳(かげ)り無く この心に
咲いて香れ 初恋草

その命の 儚(はかな)ささえ
見通されて なお愛しく

初々しさ 瑞々しさ
その命の 儚(はかな)ささえ 胸に抱く 初恋草
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