幻画の街

ひどい渋滞だった開かずの踏切
今はもう高架に変わって
苛立つ顔で何度も時計を見る人も
無くなった 食事も間に合う

遮断機が上がった後で 突然降り出した
みぞれ混じりの夏の天気雨
見張りの男がなじる そこは過去への入口
僕は一人で渡り始めてる

二人でどこか行こう 遠くの街へ行こう
黄色に朽ち果てたあの幻色の世界
どこまでも追いかけて どこまでも風に乗り
季節は巡る でももう君は帰らない

南に向いてる部屋に 差し込む朝日は
早起きにとてもいいんだ
訪ねる人はみんなノックのかわりに
掌で影絵をこさえる

開いたドアの先で海は場違いに青く
畳の色を真っ青に染める
おしゃべりヒトデが笑う 「待ち人は来ませんよ」
僕は窓から滑り落ちていく

あの海はどこだろう あの空はどこだろう
歯車をなくした時のない世界
この声が嗄れるまで 君を取り戻すまで
心は叫ぶ 絵の中の僕に向かって

二人でどこか行こう 遠くの街へ行こう
黄色に朽ち果てたあの幻色の世界
どこまでも追いかけて どこまでも風に乗り
季節は巡る でももう君は帰らない
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