旅の宿

夜空にけむる 湯の町を
月のしずくに ぬれてゆく
夢もやぶれて 泣ける身に
吐息さびしい しのび酒
酔えば未練の 旅の宿

狭霧(さぎり)をだいた 山あいに
心かよわす 水の音
揺れて咲いてる 野の花も
弱いおんなの 胸を打つ
落とす涙に 風が啼(な)く

想い出つづる 湯の川に
傷をいやせば 山鳩の
声もせつなく ほろほろと
くれる情けの やさしさよ
明日(あす)をさがして 旅の宿
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