牛乳トイレットペーパー海苔

会社帰りのケータイに
女房からのメールが入った
あいさつもコメントも一切なく
書いてあるのは
「牛乳 トイレットペーパー 海苔」

最初の頃のメールには
「買って来てね」と書いてあった
もっと前は絵文字も入ってた
今では用件だけ
「牛乳 トイレットペーパー 海苔」

コンビニで海苔を選ぶ
女房は味付け海苔は嫌いなのだ
牛乳は日付をチェックする
棚の奥の方のを取り出すのだ
トイレットペーパーはパルプのやつを
再生紙は安くて助かるけれど
やっぱり肌ざわりは悪い

寂しいなんて思わない
これが家族というものだ
愛だの 情だの んなもんはいらん
僕たちはこれで強く繋がっている
「牛乳 トイレットペーパー 海苔」
「牛乳 トイレットペーパー 海苔」

日曜の朝早くから
女房の声で起こされる
今日の仕事の指示が飛ぶ
大きな声で
「風呂場 換気扇 トイレ」

最初の頃の言い方は
「そうじしてね」とやさしかった
もっと前は自分でやっていた
今では 指示だけ
「風呂場 換気扇 トイレ」

風呂場のカビを取る
塩素がきつくて吐きそうになる
換気扇をはずそうとして
踏み台が倒れて顔を打つ
トイレはブラシの水滴を
払おうとしてトイレのヘリの所に
たたいた拍子に目に入った
こんな苦労を誰が知ろう

寂しいなんて思わない
これが家族というものだ
愛だの 情だの そんなもんじゃない
僕たちはこれで強く繋がっている
「風呂場 換気扇 トイレ」

「風呂場 換気扇 トイレ」

「風呂場 換気扇 トイレ」
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