風波

あなたから届いた手紙 陽のあたるテーブルの上
僕はペーパーナイフ 指に遊ばせて遠い日を見つめてる

どこに帰っていったの あの夏の日 二人の足跡をさらった風波
離れて初めてあなたのこと 少しわかった気がするから不思議さ

この街を出ていくと言った このままじゃ二人どこへも
進めはしないとあなたは泣いた 真っ赤な夕暮れに

色褪せない写真は嫌いだ だって思い出は淡いセピア色に
滲んでいくくらいがちょうどいい 傷つけあった時間も愛しいくらい

キラキラした水平線に僕らの壊れた明日を浮かべ
舳先を空に沈んでいくのを手を取り眺めた

もう閉じてしまった物語を本棚の高いとこにしまうように
あなたの手紙は封を切らず 青く澄んだ空へと投げ捨てた

どこに帰っていったの あの夏の日 二人の足跡をさらった風波
波うち際を走る背中が遠ざかるのを僕はここで見送る
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