追伸

電話ひとつが 遠いふるさと
花は咲いていますか
風の坂道 背中を向けて
夢を見てた この街

だけど気づけば 土の匂いが
思い出に あります
置いてきたのは 探してたもの
心だけが 知ってた

お下げ髪 紅い鼻緒の
あの娘の声 いまも
ひつじ雲 追いかけながら
見上げた空 いまも

庭の柿の木 猫と縁側
いつか巣立つ 雛鳥
川のせせらぎ 森の木洩れ日
高く跳ねた 靴音

きっとほんとは どんな道でも
帰り道 なのです
さみしいときは なにも言わずに
涙ふいて くれます

軒の下 ひとり夕立ち
虹を渡る いまも
星はまた 群青色に
滲んだ空 いまも

都結び 肌の白妙
祭り囃子 いまも
時はまだ あの日のままに
逢いたい人 いまも

電話ひとつが 遠いふるさと
花は咲いていますか
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