東京(2025)

暮らしの中で少し軋んでいる。
知らない場所へ足が急いでいる。
季節が贅沢に巡ってる。

コブシの淡い花が散ったあと、
ページを捲る指が惑っている。
密かな幸せは待っていて、僕らはいつだって使いきり。

「心なんて分からないな」ってさ
笑って泣いてみたんだ。
ねえ可笑しいでしょう、違うかな。
変われなくて浮浪したって、また僕はもがいてる。

絡めた指をすっと解いていく。
隣人愛ってなんだって思うな。
あんなに欲しがったもの全て、誰かに差し出せてしまうから。

「言葉なんて分からないな」って言う
あなたのその横顔が綺麗って思うから、馬鹿だね。
本当なんて嘘みたいで信じられずにいたよ。

桜だ。

改札を抜けたら何度も通った君の街だ。
でもそこに君はいなくて、虚しいほど風に靡く花が。

「言葉なんて分からないな」ってさ
声になる前の声で僕を責めないでよ。

分かってる。

本当なんて嘘みたいで信じきれずにいたよ。
桜だ、あなただ。
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