記憶の器

生きとっても 死んどっても 会えない人や物があって
手で触る事ができなくても 記憶は消えない

知っとても 知らんでも 揺るがない真実があって
耳で聞く事ができなくても 心は聞こえる

もう会えない人の輪郭を 目を閉じなぞっている
もう会えない人の笑い声 胸に抱き続けてる

この世界から この世界から
あなたを消してしまわぬように

あの朝の あの景色 あなたに見せてあげたかった
呉の海に浮かんだ船 名前は何だろう

あの坂や あの小道 あなたと眺めた青空
この街はあなたと過ごした 大切な居場所

もう会えない人の横顔を 心でなぞっている
もう会えない人の優しさを いつまでも消さないように

この世界で出会った全ては
私の笑うまなじりに 涙する鼻の奥に
寄せる眉間に ふり仰ぐ首に宿っている 宿ってる

もう会えない人と繋いだ手 温もりは消えない (その小さなあなたの手の)
その記憶の器として今 (温もりは)
在り続けるしかない (いつまでも消える事はない)

この世界から (遠く忘れてた) この世界から (淡い記憶)
あなたを消してしまわぬように (優しいあの子)

この世界から (冬の凍てつく海の底に)この世界から (眠ってる)
あなたを消してしまわぬように (愛しいあなた)

あなたを消してしまわぬように
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