眼差し

あの夜がこの目に
染み付いて離れない
心一つ明け渡せないままで

さよならの数だけ
欠けていく景色が
小さな背中を身勝手に押す

もういかなくちゃ
痛みに負けたくないから

好きなもの一つ二つ
少しずつつまんだ
顔のない僕ら
産声を上げた
出来立ての目玉で
君の顔を見た
酷く
酷く美しい眼差しだから
ふと
生きなければと思った

寂しさも嫌われ
愛しさも煙たがられ
欠伸一つろくに出来ないけれど

君だけの心を
打ち明けて欲しいの
それが君の肉に変わるから

ねぇ
涙だけ
隠そうとするのはやめて

心から泣いて
心から笑って
君にさよならをしないで

好きなもの一つ二つ
少しずつ願って
形づく僕ら
産声を上げた
出来立ての目玉が
僕の顔を見た

ロクでもない体が
陽に焼けてついに明かされる僕ら
産声を上げた
出来立ての愛で
君と見つめ合った
酷く
酷く美しい眼差しだから

生きたいと思った
×