北旅愁

北の岬の 日昏れは早く
沖にチラチラ 灯りがゆれる
あれは漁火 イカ釣り船か
おんなごころの 恋の炎(ひ)か
あなた忘れの 旅だから
飲めぬお酒を 少しだけ
あなた飲んでも いいですか
おんなひとり おんなひとり
夢も凍える 北旅愁

風が身を切る 岬の町は
あなた生まれた 故郷ですね
ひとり訪ねる 私の胸は
鉛色した 冬の海
潮の香が 沁(し)みこんだ
障子開ければ 夜半の雨
みぞれまじりの なみだ雨
おんなひとり おんなひとり
春は名のみの 北旅愁

朝を待てずに 哭(な)く海鳥は
群れにはぐれた 迷い鳥
眠りも浅く ため息もらす
夜明けまじかの 港宿
あなた忘れの 旅なのに
みれんばかりが つのります
あなた迎えに きて欲しい
おんなひとり おんなひとり
夢で逢いたい 北旅愁
×