ヒロイン

思い出していたんだ、あの頃の夢を
純粋に信じた、あの夜の愛を
真面目に喜んで 真面目に傷付いた
そんなことが馬鹿にされる世界だから

スポットライトが照らした舞台は
廃墟のようで
寂しさばかり満ちる

もう、いいよ
もう、やだよ
言いかけた言葉すらも
ト書き通り

私、過不足ヒロイン
愛に溺れて愛に縋るの
偽物ばかり まだまだ足りない、足りない
孤独の悲喜劇
観客なんて誰もいないよ、ねぇ
お願い、ひとりは嫌

与えられた役柄はどうも苦しくて
酸欠状態で過ごす毎日
生きる幸せと生きる不幸せ
天秤にかけたらどっちが重いだろう

私が私にかけてた願いは
呪いみたいで
ゆっくり赤く滲む

ねえ、どうして
ねえ、なんで
理由なんてないのなら
突き落として

私、嘘つきヒロイン
何に憧れ、何を目指すの?
セリフ通りじゃ 全然足りない、足りない
見飽きた結末
これじゃあ何も伝わらないよ、ねぇ
それでも、私はまだ、

思い出していたんだ、あの頃の夢を
純粋に信じた、あの夜の愛を
真面目に喜んで 真面目に傷付いた
そんなことが馬鹿にされる世界なら、

全部、壊れちゃえばいいよ。

私、過不足ヒロイン
愛に溺れて愛に縋るの
偽物ばかり まだまだ足りない、足りない
孤独の悲喜劇
観客なんて誰もいないよ、ねぇ
お願い、ひとりは嫌

続いてく舞台の上で
私なりの愛を込めて。
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