湯村夜曲

雨かさ霧か アルプス暮れて
湯村いとしや ひが招く
想ひ出される あの夜の君よ
恋の湯の宿 湯のけむり

甲斐の黄昏 山河越えて
旅を来たのも 君故に
咲いた湯花か 水晶の色か
淡い儚ない 恋ごころ

富士に出る月 二人で眺め
夢も一夜の 花の宿
君の涙で悲しく ぬれた
青いぶどうが 忘られぬ

唄は消えゆく 湯村は更ける
思い許りが ちらちらと
燃えて切ない 君呼ぶこゝろ
むせぶ恋のひ 湯のかほり
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