かもめ

一番早い便で小さな島を目指す
少しずつ遠ざかる日々に
吐き出すため息は白く
草臥れた大きめの鞄には必要なものだけ
ロープが解かれ船は動き出す
「バイバイ バイバイ」と
連呼する子供の声に (バイバイ バイバイ)と
重ねてサヨナラを噛み締めた
かもめよ かもめ 次の港に
着くまでに逸れぬように
まん丸の空 ひとりぼっちで
生きる事は出来ないから 廃れた商店街に
空き家が ぽつり ぽつり
漁港には錆々文字で “ようこそ”と綴られ
毛並みがボサボサの茶虎 「にゃお」と泣いていた
「お前には帰る場所はあるか?」
「俺は探し中だ そう 何年も。」
かもめよ かもめ 次の港に
着くまでに力尽きるなよ
まん丸の空 ひとりぼっちで
生きる事は出来ない
生きる事は出来ないから
「バイバイ バイバイ」と
連呼する子供の声に (バイバイ バイバイ)と
重ねてサヨナラを噛み締めた
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