春のうた

おだやかな風をうけ ベランダのシャツが揺れ
少しはやい冬の暮れ せわしくページはめくれ
何だか取り残されて 聞こえないふりをして
めったに見ない映画を 借りて見ようとしたり

不自然な気もするけど そんな日もあっていいよ
甘い紅茶を片手に 小さなテレビ画面
小きざみに変わる風景 わりと泣けるいい話
気がつけばエンドロール 夕食を作ろう

名もない時間に揺れている 僕なりの
名もない春のうた 明日 髪を切ろう

なつかしい友達が 仕事をやめたんだって
やりたいことが見つかり 東京に出るんだって
そういえばそんな話 最近よく耳にする
少しは焦りもするが 別にどうってことはない

ダンボールに埋もれてる 厚手のスケッチブック
あの日描いた未来とは ずいぶん違ったけど
それなりに忙しくもあり 間違いを悔やむ日もあった
だけどこうして過ごす今日が 悪くない気もするんだ

名もない時間に揺れている 僕たちの
名もない春のうた 明日 靴を磨こう

ねつけない夜も更け 静けさに身をうたれ
ひとり窓辺にもたれ たよりない月の影
いつか僕が振り返り 眼を細めて思い出す
どんな顔してるのかなんて まるで分からないけど

名もない時間に揺れている 僕なりの
名もない春のうた 明日 晴れるかなぁ
名もない時間に揺れている 僕たちの
名もない春のうた 明日 君に会いに行こう

君に会いに行こう
×