20号

落葉が濡れた舗道 埋まるようなスニーカーの音で
あわてて逃げる猫の 背中はそっと低い空ではねる

めずらしくまばらな 午後の国道を横切って
破れそうな紙袋 大事にかかえる

知りたかったことは 本にも地図にも書いてない
行こう 何ひとつ まだ始まってはいないのだから

奥歯で噛み潰した 苦い薬は効かなかった
あきれて言葉もなく つくり笑いでみんな出て行った

アスファルト工事は 始まってもう二週間になる
面倒な迂回路も 慣れてしまったよ

使わなかった傘は どうにもかさばるだけなんだ
それもいいだろう 何も終わってはいないのだから

言えなかった言葉は どうにもかさばるだけなんだ
行こう 何ひとつ 何ひとつ 始まってはいないんだ

知りたかったことは 本にも地図にも書いてない
行こう 何ひとつ まだ始まってはいないのだから
×