ちいさな汽車

ちいさな汽車が走るよ
朝の広野原を
長く煙をひいて
シュシュホーシュシュホー行(ゆ)くよ
牧場の牡牛の群れや
やぎに見送られて
元気に汽笛をならし
シュシュホーシュシュホー行くよ
だけどこの蒸気で走る
ちいさな汽車は時代おくれ
今じゃみなどこへ行くにも
電車に乗り 車をとばす

ちいさな汽車のお客は
だから誰もいない
いつも機関士だけで
シュシュホーシュシュホー行くよ

ちいさな汽車はさいごの
つとめに出かけていく
悲しみかみしめながら
シュシュホーシュシュホー行くよ
さよなら川よ畑よ
緑ふかい森よ
疲れた足をひきずり
シュシュホーシュシュホー行くよ
のろのろと麦の畑に
ちいさな汽車がさしかかると
誰もみな線路のわきに
手をふるためかけよってくる
ちいさな汽車は別れの汽笛を
ならしたのち
さびしく山のむこうへ
シュシュホーシュシュホー
シュー 消えた
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