フーセンガムと少年と

あのころの夕日がまぶしかったのは
俺の未来がまぶしいと思えたから
夢の詰まった駄菓子屋で
当たりつきのフーセンガムに夢をつめこんで

はしゃいだあとに吹く風はせつなくて
それでいて気持ちよくて
背高のっぽの影がどこか大人びてて
ヒグラシの声に消えていった

チャリンコさえあれば どこへだって行ける
いつかテレビでみた あの国へだって行ける

少年よ 今も ポケットの夢は落としてはいないかい?
少年よ 今も 宝箱の中にしまってあるかい?

弱いくせに喧嘩をふっかけて
泣きながら踏みしめたアスファルトに
壊せやしない悔しさをぶつけて
ポケットの夢を確かめる

いつか大人にあこがれを抱き始め
届かない背伸びをやってはみたけれど
やがて時代は流れ
大事なものをごっそり落としていった

汗だくになって しがみついていた
錆びた鉄棒と 手にできたまめと

少年よ 今も あの時のくやしさは忘れてはいないかい?
少年よ 今も あの時の少年に微笑んでいられるかい?
少年よ 今も ポケットの夢は落としていないかい?
少年よ 今も 宝箱の中にしまってあるかい?
×