人の瀬

視線で追えるものだけ 詞先で作り上げてきた
鎧も服も持たない 丸裸の分身を

海が見えたから急ごう 眩しい波のあるうちに
擦り減らすのは心じゃない その靴底と知るために

差し延べられた声の光に 見惚れていただけの非力さよ
これからいくつ返せるだろう この情熱を残したままで

犠牲にすべきものほど 理性で追いつけなくなる
畳に貼りついた足の 神経がねじれて痛い

二つとない空の下で 眩しい君が去らぬうちに
繰り返すのは言葉じゃない その呼吸の熱い断続

変わらぬ朝に人は流れて 閉じられぬ思いに舌を切る
このまま誰が救われるだろう 音のない夜に声も出なくて

差し換えられた声に気づかず 転がされていただけの滑稽さ
これからいくつ落とすのだろう 俺にはいくつ残るのだろう

差し延べられた声の光に 見惚れていただけの非力さよ
これからいくつ返せるだろう この情熱を残したままで
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