ふるさと哀歌

夕日を背に受け 引きずる我が影
雲間に霞んだ ふるさと遠く
見捨てて幾年(いくとせ) 還れぬ辛さ
いかにおわすやら 名残りは尽きぬ

芭蕉の侘び寂び 心に染み入る
若い日見た夢 枯野を廻(めぐ)る
始発のホームの 涙よ何処
今は無人駅か 小鳥が守る

夜中の呼び出し 不吉な予感に
まさかはたちまち 嘆きに変わる
看取りも叶わず 不幸を詫びて
眠るお母さんに 指輪をはめる

墓標に近づく とんぼの案内
今宵はお里の 布団で泣けと…
両手を掌わせて 薫(くゆ)らす煙
旅の千切れ雲よ どうして笑う

お彼岸過ぎても まだこの暑さよ
喉元過ぎても 忘れぬ絆
今夜もおいでか 北斗の星で
友よ父よ母よ いつまた逢わん
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