金魚のジョン

近所の祭り 金魚すくいで
僕が巡り会えたジョン
お名前に特に理由はない
ただ呼びやすかったから
ジョン

家族の愛を一心に受けて
すくすく育ったねジョン
宿題もごはんもそっちのけ
いつだって一緒だった

同級生のケンタが
犬を飼ってるの羨ましくて
サンタにまで願った僕が
やっと手に入れた相棒

水槽の中 季節はめぐる
幸せ太りしたジョン
まさかこんなにデッカくなるなんて
くるりターン出来なくなった

じっと見つめて父さんが言った
もはやこれは鯉だ、ジョン
何が彼の幸せか
家族で話し合った

もっと広い世界で
のびのび泳いだ方が
きっとジョンのためだろうと
みんな分かっていた
でもそんなの嫌だよと
弟がしくしく泣き出した
僕もとうとう我慢出来ず
わんわん泣いた

ついにこの日がやってきた
いよいよお引越しだねジョン
水槽を車に積み込んで
ゆらゆら 隣町へ

おじいちゃんちの 裏庭の池
水を得た魚だねジョン
「ともだちができた」と言って
目を細めたおじいちゃん

はじめての僕の相棒
「また、会いに来るからね」
のぞきこんだ水の中
ジョンがくるりターンした
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