乙だね

空にひと筋 はぐれ雲
相棒どうした 淋しくないか
男やもめの このオレと
差しでいっぱいやって行かないか
乙だね 酒はワインのとって置き
肴はアイツの里(さと)のホッケのひらき
乙だね なんて云うのは痩せ我慢

馬鹿を承知で故郷(くに)を捨て
俄か思案の東京ぐらし
『惚れている』とも『好きだ』とも
たった一度もいわず仕舞いだよ
乙だね 古武士みたいに恰好よく
寡黙な男といつも女房に見せた
乙だね なんて云うのは痩せ我慢

北へ旅立つ渡り鳥
男心を伝えておくれ
今度生まれて来る時は
きっと愛していると云えるだろ
乙だね 窓の向こうの遠花火
ミュートを利(き)かせたように聴こえる太鼓
乙だね なんて云うのは痩せ我慢
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