たった一言なぜ云えぬ

雨の銀座の 街角で
わざとつれなく 別れたが
泣いたあの娘の 横顔が
なぜか瞼に ちらついて
暗い淋しい 夜の雨

好きな女に なぜ好きと
せめて一言 云えなんだ
どうせやくざな この俺に
恋の重荷は 野暮なこと
あすは流れの 旅の空

こんな男に ほれたなら
末の苦労が 目にみえる
可愛いお前の 幸福を
祈る男の このこゝろ
泣いてうらんで くれるなよ
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